道徳科授業において、子供たちの発言に応じて即興的に出す発問を「問い返し」「切り返し」「補助発問」など、様々な名称で呼んでいるようです(論者によって呼び名が異なるので、明確な決まりはないと理解しています)。
さて、深い学びを目指すためには、子供たちの思考や発言に応じた発問が必要になります。ここでは、問い返し発問について、髙宮(2020)が整理しているものについて考えます。髙宮は「問い返し」を大きく二つに整理しています。
一つ目は、明確化のための「問い返し」です。
(髙宮正貴『価値観を広げる道徳授業づくり 教材の価値分析で発問力を高める』を参考に筆者作成)
上記の「問い返し」は、子供たちの思考を深めるための発問だと言えるかもしれません。子供たち自身が「そう言われたら、何でだろう・・・」と考えることで、気づいていない本当の気持ちや、自分が大事にしていることに気づかせることができるからです。
しかし、この発問を発言者のみに頻繁に返してしまうと、発言を苦しく感じる子もいるでしょう。また、他者との対話につながりにくい側面もあります。そこで、一人の子供の発言を全体に問い返すという返し方も重要になってきます。「◯◯さんはとてもうれしいと言っているけれど、その理由をみんなは想像できますか?」という具合です。
二つ目の「問い返し」は、「重層的な問い返し」です。
(髙宮正貴『価値観を広げる道徳授業づくり 教材の価値分析で発問力を高める』を参考に筆者作成)
上記の「問い返し」(重層的な発問)は、事前に子供たちの思考や発言を予想して用意していることもあるので、地域によっては「補助発問」と呼ばれることもあるでしょう。こちらは、思考を広げるための「問い返し」と言うことができるのではないでしょうか。
この思考を『深めるため』と『広めるため』の問い返しを、日々の授業で効果的に活用していきたいものです。
《参考引用文献》
髙宮正貴『価値観を広げる道徳授業づくり 教材の価値分析で発問力を高める』(2020,北大路書房)
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