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2022/06/04

三びきは友だち(7)


 2年生教材「三匹はともだち」の中心発問は、教科書(日文)では「ぴょんたは、長い間下をむいて、何を考えていたのかな」とあります。本日は、この「中心発問」の分析に取り組みます。

 本教材で最も考えさせたいことは、「人によって違う態度をとることについて」です。

 子供たちに直接「人によって違う態度をとることについて話し合いましょう」といって対話が成立する学級ならよいのですが、もちろん小学校低学年にそのようなことは困難です。そのため、授業では「発問」という形で子供たちの対話を導くことになります。

 下図は、本教材の中心発問に係る要素をまとめたものです。中心発問の目的は「人によって違う態度をとることについて考えること」です。そのためには、自分の好き嫌いにとらわれると仲間外れや一人ぼっちが生まれることを理解したり、それでも好きな子を優先してしまうかもしれない人間の弱さに共感させたりする必要があります。それらを基本発問として、または中心発問に関連させて補助発問として考えさせるのです。

 このように、道徳科授業における「中心発問」は単独で成り立つものではなく、学習内容を明確にしたうえで基本発問や補助発問と密接につながるものであるという認識が必要になるでしょう。

                                    (筆者作成)



2022/05/28

三びきは友だち(6)と「はしの上のおおかみ」


 

 園田(2021)は、「はしの上のおおかみ」での発問に関して以下のように述べています。

(以下、著書より抜粋)

はしの上のおおかみについて、次のような発問をしてはどうか、と提案している。「おおかみはどうしてえらそうにしていたのだろう」。子どもは自分の経験をふまえつつ、一年生ならではの意見を述べてくれるに違いない。よくないとされている行為の背景には、おおかみはおおかみなりの理由がある。そのことを理解できている子ども。意見を聴いて新たに気づく子ども。理解に苦しむ子ども。これからどうすればよいかについて新たな行動提起をしてくれる子ども。様々な子どもの育ちの姿がくっきりと具現する発問として、とても興味深い。

(以上)

 「はしの上のおおかみ」のおおかみと、「三びきは友だち」のぴょんた、どちらもその行為の背景を理解してあげる必要があるといえないでしょうか。園田の提案をもとに考えると、「ぴょんたはどうしてわんた一人のせいにしたのだろう」という発問に、大きな意義があるといえます。


《引用参考文献》

園田雅治『「つながり」を育み授業を愉しむ』(2021,解放出版社)

2022/05/27

三びきは友だち(5)


 先日は、以下(図1)のような展開でぴょんたの視点を与えることを述べました。

(図1 ぴょんたの視点をもたせるための学習展開案 筆者作成) 


 別の方法として、範読の後に感想を伝え合うということもできます。範読を聞くと子供たちはそれぞれの視点で感想を抱きます。頭の中にモヤモヤを感じたり疑問を持ったりします。自分の経験を思い出している子もいるでしょう。その範読の後の「もやもや」こそ、違和感こそ、その子が現在もっている道徳性なのです。今自分がもっている道徳性を自覚させ、他者の感じ方との違いを知り、ずれに気づく。感想を伝えることにはこのようなねらいもあります。

 さて、「お話を聞いた感想をお隣に伝えてごらん」、範読の後にお隣とペアトークをさせてはどうでしょうか。おそらく、それぞれの思いを伝え合うでしょう。ここで、小さな工夫ですが、「では、感想を発表してください」と呼びかけた際に、挙手が少ないことがあります。そのような時は、「お隣と感想が似ていたい人?」「お隣と感想が違っていた人?」のように呼びかけてみることも効果的です。

 子供たちからは、「ぽんきちがかわいそう」「ぴょんたのしたことはいけないことだと思う」「自分から走っていったわんたはえらい」など、様々な視点の感想が出てくるでしょう。それらの感想を出させたあとに、例えば「なにか不思議に思うことはあった?」「一番考えてみたいことは何かな?」と尋ねると、本時の学習テーマを設定することにつながります。「なぜ、ぴょんたのしたことはいけないと言えるの?今日はこのことについて考えてみようか」と、教師から提案をしてもいいでしょう。

 また、ここでの感想を授業後半で活用することもできます。わんたの姿を見て、自分から走っていったぴょんた。例えば、「わんたと同じように、ぴょんたも気づいたんだね。ぴょんたも、わんたと同じようにえらいね」と、悪者を作らずに授業を終えることができます。「ぴょんたはいけないことをした」という感想を後半で活用すると、「下を向いているときに、◯◯さんが言ってくれたように、ぴょんたはいけないことをしたことに気づいて、悩んでいたのかな。」と、子供の言葉を使って発問をつくることができます。

 このように、「感想を尋ねてみる」という学習活動を入れてみるだけで、授業の幅が大きく広がるのではないでしょうか。

 

(図2 児童生徒の感想をもとに視点をもたせるための学習展開案 筆者作成)

2022/05/26

三びきは友だち(4)


 本教材を読んだ時、皆さんは登場人物の誰の視点で物語に入り込みましたか。私は・・・、ぽんきちの視点になりました。自分だけが悪者にされて怒られる・・・。きっと悲しかったことでしょう。

 さて、学級の子供たちも、教材を読んだ時点でどの人物の視点でお話の世界に入り込むかはそれぞれです。その「視点」を教師がどのように扱うかも、授業づくりでは大事になります。なぜなら、教師は中心人物のぴょんたになるという前提で授業を設計していることが多いので、そのままでは思考の前提(視点)が揃わないからです。その場合、教師の発問が子供たちに届かない(理解されない)ということが起こってしまいます。

 私のようにぽんきちの視点でお話に入っているのに、教師からは「ぴょんたになりきって考えよう」と言われると、授業に入ることを難しく感じてしまいます。そこで、その難しさに対応する手立てとして、授業のはじめに「ぴょんたになって考えてね」と伝えることで物語に入る視点を与えることが考えられます。この場合、全員の視点をすぐに揃えられる(考えやすくなる)というメリットがありますが、子供たちの自由な思考を妨げてしまうというデメリットもあります。学びの主体者は子供たちなので、やはり思考(視点)の自由さを大事にしてあげたいところです。

 もちろん、視点の与え方を工夫することで子供たちの主体性を引き出すことも可能です。

例えば、教材の範読の前に、お話の前半(くまおじさんの登場する場面まで)を教師が挿絵を使って説明します。「花壇をめちゃくちゃにしたのは誰だ」と叫ぶくまおじさんに対して、ぴょんたはどのような行動をとったのかを子供たちに自由に想像させます。その想像を発表させたあとに範読をすると、子供たちはすでにぴょんたの視点で物語に入り込みます。そして、自分の想像と異なる行動をしたぴょんたに対して、「えっ!」「おかしい!」とつぶやくでしょう。これが、視点を揃えたうえで主体性も大事にできる授業展開の案の一つです。

 なお、そのつぶやきの中には、「不合理な言動をおかしいと感じる心」が込められています。しかし、2年生の子供たちは、その心を自覚していないかもしれません。言葉では上手く表現できないかもしれません。だからこそ、つぶやきを拾い、その心を自覚させてあげる必要があるのです。



2022/05/25

三びきは友だち(3)


 前日、以下の三点の視点を本教材の授業づくりで大事にしたいと述べました。

 本日は、上記の視点をもとにして授業展開のポイントを考えます。

(1)「仲間はずれ」「一人ぼっち」が生まれることを理解させる。

 ぴょんたの言動により、ぽんきちだけが怒られることになりました。仲良しのわんたを助けるために、ぽんきちが一人ぼっちにされたのです。ここで気をつけたいのは、「怒られる」ということに注意を向けさせるのではなく、ぴょんたの言動によって仲間はずれや一人ぼっちが生まれたことに目を向けさせることが大切になります。


(2)自分も周りも嫌な気持ちになることに共感させる。

 ぽんきちはきっと悲しい気持ちになったことでしょう。それは、花壇を踏みつけてしまったことをくまおじさんに厳しく怒られたからでしょうか。「怒られたから、悲しい気持ちになったんだよね?」と尋ねてみると、子供たちはどのような反応をするでしょうか。「いや、そうではない!自分一人だけが悪者にされたからだ!」という発言が生まれないでしょうか。怒られることは嫌なことです。しかし、誰かが大切にしている花壇を踏みつけてしまったのなら、それは怒られて仕方のないことかもしれないと2年生の児童も考えるでしょう。本当に悲しいことは、その行為を自分一人のせいにされたことであり、その悲しみを子供たちに気づかせる必要があるのです。このままでは、ぽんきちは心に深い傷を負うかもしれません。ぴょんたのことも嫌いになってしまうでしょう。「このままでいいのかな?」「わんたは怒られなくてよかったね。わんたは嬉しかったのかな」ということも子供たちに尋ねたいところです。


(3)みんなが楽しく、よい気持ちになれることに気づかせる。

 ぴょんたは、長い間下を向いて考えた後、走り出しました。その後の様子は教材に描かれていません。もしかしたら、ぴょんたもすごく怒られたかもしれません(中学校の生徒指導の先生に言わせると、一番怒られるのはぴょんたになるとのことです)。では、ぴょんたは下を向いている間に、どのようなことを考えたのか。何に気づいて走り出したのか(中心人物の変容)、その変容場面の葛藤を尋ねることは大変有効になります。

 さて、変容場面の葛藤について子供たちに尋ねると、どのような意見が出るでしょうか。

①「くまおじさんに嘘をついたことを謝ろう」

②「一人ぼっちにさせてしまったぽんきちに謝りたい」

③「仲良しのわんたに嫌われたくない」

④「自分一人が仲間外れにされると思った」

 上記の①は本教材のねらいとは異なり、「正直、誠実」の内容に近くなります。子供の発言を受け入れつつ、「広げるための問い返し」をしていきたいところです。②の意見が出てきたら、その考えについて全体で深めていけばよいでしょう。

 さて、③と④の意見はいかがでしょう。「自分は仲間はずれにされたくない」「一人ぼっちにされてさみしかった」など、子供たちの素直な思いや過去の経験から出される発言かもしれません。このような意見を大事に受け取って問い返すことで、道徳的諸価値のよさに気づかせることができます。例えば、「今のぴょんたなら、ぽんきちの気持ちがよくわかるかな?」「わんたの姿を見て、ぴょんたが気づいたことはどんなことかな?」などのように問い返したあと「お隣の人とお話してごらん」と声をかけると、きっと活発なペアトークが生まれるのではないでしょうか。

2022/05/24

三びきは友だち(2)


 学習指導要領解説の低学年「公正、公平、社会正義」に、「自分の好き嫌いにとらわれて接すると、仲間はずれや一人ぼっちになる人が出ます。そうすると、その人もいやな気持ちになりますが、自分も、周りもいやな気持ちになります。」という文言があります。この2文が本教材の授業づくりに大きなヒントを与えてくれます。

 前述しましたが、本教材は「友達」や「素直に謝ること」について考えることを目的とはしていません。「みんなで仲良くするということ」について考え、そのよさを実感したり自己の行動をふり返ったりすることをねらいます。その学習活動を学習指導要領解説の言葉を借りると以下のようになります。

 

 この三点を意識して発問や展開を用意する必要があるということです。

2022/05/23

三びきは友だち(1)


 日本文教出版2年生「三びきは友だち」の授業づくりに取り組んでいきます。

 内容項目は「公正、公平、社会正義」。学習指導要領解説によると、低学年の学習内容は「自分の好き嫌いにとらわれないで接すること」になります(上位学年の中学年は「誰に対しても別け隔てをせず、公正、公平な態度で接すること」)。

 本教材を一読して見ると、「この3びきは友達かな?」という疑問が思い浮かびます。この疑問がそのまま発問(授業展開)につながるかもしれないと考えてしまいがちですが、本教材を「友達について考えよう」というねらいにしてしまうと、学習指導要領の学習内容と大きく異なってしまうことに気づきます。

 また、最後の場面で、中心人物である「ぴょんた」が何を考えていたのかを子供たちに話し合わせた時に、「きちんと謝る」という発言をする児童がいることも想定できます。しかし、先述と同様、本教材の学習内容は「悪いことをしたら、素直に謝る」(正直、誠実)というものではありません。

 このように、「自分の好き嫌いにとらわれないで接すること」という学習内容、いわゆる「えこひいきをしない」という思考は2年生の子供たちの素直な感想からはなかなか出てこないものではないかと想像できます。なお、もしかしたら「みんなで仲良く」ということを幼稚園や1年生で教えられてきたかもしれませんが、そのよさを実感しないままスローガンのように使ってきている子が多いかもしれません(これはただの「行為の押し付け」)。同様に、本教材の授業の終末で「みんなで仲良くすることは大事だね」と教師から伝えることにあまり価値はありません。まずは、本教材の学習内容が子供の発達段階による意識から遠いところにあるということを意識した上で、「みんなで仲良くするとは、どういうことか」「そのよさはどのようなものか」を考える授業展開を考えてみてはどうかと思っています。