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2024/02/08

本がかりさん がんばっているね(2)〜がんばろうを引き出す〜


 前日に続き、2年生の教材「本がかりさん がんばっているね」(日本文教出版)の授業づくりについて考えます。

 教材中盤で、本係の二人の葛藤が描かれています。「面倒になってきた」「損だ」というマイナスの表現が複数出てくるので、思わずその気持ちに共感させたいと思うところですが、低学年では、「働くことへの意欲や喜び、充実感」に焦点を当てた方がよいということを前日に述べたところです。

 この場面でも、二人は葛藤したけれど、その後もみんなのために本棚の整理をがんばっています。葛藤をしながらも、二人はその後にどのような会話をしたのでしょうか。その会話を想像させることで、「面倒」という思いではなく、「でも、がんばろうね」「みんながきっと気づいてくれるよ」など、働くことの意欲や喜びにつながる思い(より高い価値)を引き出すことができるのではないでしょうか。

 村田昇も、道徳と葛藤の関係について、以下のように述べています。

(以下、参考文献より一部抜粋)

 葛藤のなかでいかなる道を選ぶか。その選択のしかたは無数にあり、けっして一つではない。しかも、そのいずれかが正しくていずれかが正しくないというのではなくて、そのいずれもある程度正しいし、また、そのいずれもことごとく正しくない。この葛藤の場において、少しでもより高い価値を選択しようと努力するところに、道徳は成立するのである。

(以上)

 本係の二人も、この葛藤の中で、少しでもより高い価値を選択しようとしたのではないでしょうか。


《参考引用文献》

上田薫・平野智美『教育学講座16 新しい道徳教育の探求』(1979,学習研究社)

2023/12/06

道徳科授業の発問研究(8)〜3年生「まどガラスと魚」〜


 3年生教材「まどガラスと魚」の「発問」を考えてみる。中学年の内容項目「正直、誠実」は、「自分を偽らない」ことがキーワードとなる。それは、自分の「正直でありたいと思う心に嘘をつかない」ということであり、中心人物の千一郎の心の中の「謝りたい」という気持ちに焦点を当てることがポイントになってくる。

 そこで、実際の授業では、「千一郎に、『謝ろう』という気持ちが初めからあったのか」ということを確認しておきたい。文助の「にげろ。」という声を聞き、夢中で逃げてしまった千一郎。もし、その声がなければ、千一郎はどうしていたのか。解説にも、「正直に伝えるなどして改めようとする気持ちを育むことも求められる。このことは、たとえ仲の良い仲間集団の中にあっても、周囲に安易に流されない強い心を養う要ともなる」と記載されているが、このときの千一郎は、謝りたいという気持ちはあったが、周囲に流される弱い心であったことを押さえておくことが、この後の心情の理解につながるからである。

「謝っているお姉さんの姿が、千一郎にはどのように見えたのでしょう」という発問も考えられる。「叱られなくてよかった」「ビクビクしなくてよくなった」と安心しているように見えた訳ではないだろう。「堂々としている」「かっこいい」などの意見が出ると予想される。「なぜ、そう思うのか」と尋ねることで、千一郎自身の願いに気づかせるとともに、道徳的価値のよさの深い理解をねらうことができる。

 同じように、「おじいさんから返してもらったボールを見て、千一郎はどんなことを考えただろう」と発問することも考えられる。例えば、この場面で役割演技を取り入れ、千一郎役の児童がボールをどのように受け取ったのかに着目させる。両手で受け取っていたのなら、「ガラスを割ってしまったボールなのに、なぜ、そんなに大事そうに受け取ったのか」と尋ねることで、弱い心に打ち勝った喜びを実感していることや、正直でいることの快適さを自覚していることに気づかせることができる。

 中学年の本教材の授業で、「謝ることが大切だ」「正直に謝ったら、気持ちが楽になる」などの理解で終えてしまうと、それは低学年の学習内容であり、子供たちにとって深い学びにつながる道徳科授業になっているとはいえない。解説の記述をもとに、「何を考えさせるか」を明確にすることで、より深い学びにつながる「発問」をつくることができるのである。

2023/10/13

3年生「まどカラスと魚」と役割演技


 内容項目「正直、誠実」の教材、「まどガラスと魚」(日本文教出版社 小学校3年生)での役割演技について考えます。

 役割演技は、演技後の対話が重要です。その際、観客役の子供たちに「演技を観た感想を発表してください」と発言を促したとしても、子供たちは何を伝えたらいいのか困惑してしまいます。また、演者に同じように尋ねたとしても、深い理解につながる感想は出てきづらいでしょう。

 演技後の対話のポイントを以下のようにまとめました。

 

 例えば、教材「まどガラスと魚」で、おじいさんとのやりとりを演技させるとします。その際、ボールを受け取る場面に着目してみます。すると、演者(千一郎)は、おじいさんからボールをどのように受け取るでしょう。ここまでの展開で正直でいることの大事さを考えてきた演者(千一郎)なら、おそらく両手で大事そうに受け取ることでしょう。その姿がどのように見えたかを問うことで、価値の深い理解につなげていくことができます。

 

2023/09/21

いじりといじめ(6)


 先日、「いじり」は『遊びのフレーム』であると述べました。個々の言動に着目させるだけではなく、そのフレーム(集団)に目を向けさせることが大事になるということです。このことは、内容項目C「公正、公平、社会正義」の内容にも合致しています。

 さて、本教材の展開後段で学級という集団に目を向けさせるための手段として、教材の中の学級の一員になりきって「模擬学活」をするという学習活動はいかがでしょうか。モラルスキルトレーニングの手法を取り入れ、一回目は「再現のロールプレイング」として、ゆうきが思い悩んでいる場面を再現させます。2回目は「解決のロールプレイング」として、実際に教材の中の学級の問題を解決するための話合いをさせ、実際に身に付けるべきスキルについて考えさせます。

 「いじり」か「いじめ」かについて議論を進めても、子供たちの理解が深まらないと想定される場合、上記のようなモラルスキルトレーニングとしての「模擬学活」という学習活動もおもしろいのではないでしょうか。

2023/06/13

小学校3年生教材「学級しょうかい」(5)


 小学校3年生教材「学級しょうかい」の教材分析5回目です。

 本教材では、大縄の練習をしている場面があまり描かれていません。30回を連続で跳べるようになるまで、おそらく多くの失敗や葛藤があったと思われます。だからこそ、30回を超えたときの喜びはとても大きなものだったのではないでしょうか。

 そこで、「初めて30回跳べたとき、どれぐらい嬉しかったのだろうね」という発問をもとに、そお場面を動作化させてはいかがでしょう。小さな小さな動作(喜び)ではなく、教室が震えるほどの動作(喜び)を表現することで、教材の中の子供たちの心情を理解(共感)させるのです。そうすることで、授業後半で「協力することのよさ」をより実感的に考えることができるでしょう。

 また、この場面で動作化(大きな喜びをみんなで表現)することは、先日に紹介した「共有体験」にもなります。日々の授業の中で常に「共有体験」を積み重ねていくことも、学級経営をしていくうえで大事なポイントになるでしょう。





2023/05/17

役割演技を取り入れた道徳科授業のつくり方


 道徳科授業に役割演技を取り入れる際のポイントを考えていきます。

 上越教育大学大学院の早川裕隆は、「役割演技」を取り入れた道徳科の授業づくりについて、以下のように提案しています。

(以下、一部抜粋)

 内容項目で学習する内容を理解しましょう。授業を構想する際に、まず、解説の内容項目の内容をよく読みましょう。特に、「指導の要点」にある「指導に当たっては」以降を読み込み、用いる教材を通じて特に学習したい内容を明確にしましょう。 

 その上で、どんな活動(教材のどの場面で何を考えるか)を通して、具体的にどんなことを深めるようにしたいのかを明示しながら、それをどのような資質の養成(到達目標とは性格を異とする)につなげるのかを本時のねらいとしましょう。すると、中心発問が明確になり、役割演技を活用して考えたい場面と意味が見えてきます。

(以上)

 大事なことは、「役割演技」は道徳科授業においての「手法」であり、一番大事にしなければならないことは「その授業を通して考えさせたい(気づかせたい)学習内容」を明確にすることだということが、上記のことから理解できます。


《引用参考文献》

『道徳教育 2022年12月号』(明治図書,2022)

2023/05/11

内面的資質を養う役割演技


 役割演技についての学習指導要領解説の記述を読んでみます。

(教材に登場する人物等の言動を即興的に演技して考える役割演技について)単に体験的行為や活動そのものを目的として行うのではなく、授業の中に適切に取り入れ、体験的行為や活動を通じて学んだ内容から道徳的価値の意義などについて考えを深めることが重要である(小学校96頁、中学校97頁)

 この記述をもとに、上越教育大学大学院の早川裕隆は、道徳科授業における「役割演技」を以下のように解説しています。

(以下、一部抜粋)

 道徳授業における役割演技は、単に教科書にある台詞をそのまま表現(再現)することでも、「何と言ったらいいか」「どうしたらいいか」といった、予め想定した特定の台詞や行為を教え、単なるデモンストレーションとして練習(体験)をしたりすることが目的ではありません。内面的資質としての道徳性を養うという道徳科の特性に鑑み、「なぜ、そのような役割が(即興的に)演じられたのか」、役割演技で自発的に演じられた内容を基にしながら、演じられた役割の意味などについて解釈しながら話し合い、意義などを明確化することを通して、道徳的価値についての理解と、生き方についての考えを深めること、役割演技はそれらを融合させながら実現することを目的とする指導方法=手段であることを理解しましょう。

(以上)

 役割演技で大事なことは「即興的な演技に込められた意味を解釈しながら話し合うこと」であり、その話合いを大事にすることが、道徳科授業のねらいである「道徳的価値の理解を深める」ことにつながるのです。


《引用参考文献》

『道徳教育 2022年12月号』(明治図書,2022)

2023/05/09

小学校1年生『二わのことり』を分析する③


 小学校1年生教材「二わのことり」の教材分析③です。今回は、うぐいすの家の「ごちそう」に注目します。

 このお話では、うぐいすとやまがらが対比的に描かれています。

うぐいす

やまがら

音楽会の練習

誕生日会

近くの梅の林の明るいところ

山奥の大きな木の穴でとてもさびしいところ

たくさんのごちそう

【記述なし】

 「音楽会の練習」と「誕生日会」、「明るいところ」と「さびしいところ」という対比を通して、子供たち自らの判断基準について考えさせたいという意図が感じられます。

 しかし、うぐいすの家には「たくさんのごちそう」があるのですが、やまがらの家の食事については記述がありません。この部分にも教材作成にあたっての何かしらの意図が隠されているように思われます。

 実は、「二わのことり」の原文を読むと、やまがらの家の食事についての記述があるようです。

(教材分の原文の続き)

「さ、なにもないけれど、これをたべてくださいよ」

と言い、二わのとりは、小さな木の実を仲良くつつきあって食べました。

 みそさざいとやまがらの二羽の仲睦まじい様子が伝わってきます。この文を読むと、1年生の子供たちも「やまがらの家に行ってよかった!」と実感することでしょう。

 しかしながら、この記述は教科書にはありません。そこで、有効な手立ての一つとして「役割演技」が考えられます。みそさざいとやまがらの「その後(教材の続き)」を即興的に演技させるのです。

 その演技の中で二人が笑顔で食事をする様子が演じられるかもしれません。そのためには、授業前半でうぐいすの「ごちそう」を意識させておくことも有効です。例えば、授業の前半で「ごちそうを見て、みそさざいはどんな気持ちになったかな」と問うこともできます。

 即興的な演技を観て、その演技をもとに子供たちに話し合わせる。そうすることで、みそさざいの行為のよさに気づき、その喜びを実感させられるのではないでしょうか。