2021/12/03

中学1年「公平と不公平」


 中学校1年生教材「公平と不公平」(日文)という教材があります。昨日紹介した5年生「これって不公平?」とよく似ている構成になっています。

 本教材は、ある事例について公平か不公平かを議論させる学習活動が組まれています。一見すると扱いやすい(盛り上がりやすい)教材ですが、いざ授業をしてみるとあまり深まらずに終えてしまうことが多いと想像できます。「扱いやすい」と感じられる教材の多くは、実は価値理解を深めることが難しいことが多いと、私は体験的に感じてます。

 さて、本教材での授業のねらいや展開を考える際、指導書研究編に書かれていることが参考になりそうです。

(以下、指導書研究編より抜粋)

3つの事例について、「これは公平」「これは不公平」と決めることだけが、本教材の趣旨ではない。公平か不公平かを判断するとき、それらに共通する判断の根拠が明確になるように話し合いを深めていきたい。

(以上)

 二項対立的に議論させることが目的ではなく、議論をさせることを通して「判断の根拠」を明確にすることが求められています。生徒の発言を分類・分析することを通して、共通する思いに気付かせたり一般化できる思考過程を見つけさせたりするのです。

 その際、授業者は「判断の根拠」となるものをきちんと用意しておくべきでしょう。そして、それは授業者個人の経験や願いだけではなく、誰が考えても同じような思考ができるだろう明確な根拠をもつことが求められます。ここでヒントになるのも、指導書解説編です。

(以下、指導書研究編より抜粋}

また、この問題は、法教育では「配分的正義」として扱われている。配分されるもの・ことには大きく分けて「利益」または「負担」があり、「必要性(配分されるもの・ことがその人に必要かどうか)」、「能力(その人にできるかどうか)」、「適格性(その人にふさわしいかどうか)」といった視点で公平かどうかを考えさせることもできる。

(以上)

 この文章を読むと、授業の方向性として「必要性」「能力」「適格性」という3つの観点を獲得させる、いわゆる「見方・考え方」を身につけさせることが大切だと理解できます。この3つの観点を教師が示すのではなく、発言を分類・分析することを通して自分たちで発見させられたら、きっと子供たちにとって学び深い授業となるのではないでしょうか。そして、その思考過程こそが道徳科授業で大事にしたい学びなのだと考えています。

 なお、本教材の授業展開案には、「P4C(子どものための哲学)」の手法を取り入れた案も掲載されています。このことから、様々な授業方法を柔軟に取り入れることを勧められていると読み取ります。昨日の記事でも述べましたが、道徳科授業での学び方に絶対はありません。様々な手法を柔軟に取り入れ、目の前の子供たちが「考えたい」「伝えたい」と思える授業をつくっていけたらと思っています。

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