PEP(ペップ)とは、「元気・活気・活力」という意味です。スポーツ大国アメリカで、ペップトークは、試合前のロッカールームで監督やコーチが選手の心に火をつける言葉がけとして誕生しました。
さて、ペップトークについての詳しい内容は書籍等に譲るとして、今回は「言葉」に着目していきたいと思います。ペップトークのポイントとして、「ネガティブの言葉は現実になる」という考え方があります。頭の中のイメージの世界では肯定的と否定形を区別できないと考えられています。だから、「ミス+肯定形」でも「ミス+否定形」でも、どちらもミスしているイメージが思い浮かんでしまうということです。「ミスするな」や「あきらめるな」は、すべて否定的な声かけとなるということです。
道徳科授業で子供たちが自由に発言をできるようにするには、教師と子供たちが「安心」でつながっていることが必須です。信頼できる関係があるからこそ自由な議論が生まれ、本当の自分を語ることができるからです。
私達教員は、子供たちに言葉を届けることが仕事です。しかし、学校現場にいると否定的な言葉があふれているように感じてしまいます。それは決して悪意のある言葉ではなく、善意のある否定的な言葉です。「間違えてもいいから言ってごらん」「こけたとしても、最後まで走るんだよ」というような声かけです。相手を安心させようと思っての声かけが、実は相手を追い込んでしまう要因になっていることがあるのです。
日々の子供たちとの言葉のやりとりを、一度見直してみたいものです。スポーツ指導をする際、私も「失敗してもいいから全力でやってごらん」という声かけをしていました。しかし、ペップトークを知った後の最初の大会引率で、「がんばってきた毎日を思い出してごらん。毎日練習をがんばってきた君たちは速い。必ず今までも一番の記録を出すことができる」という声かけをしたのを覚えています。子供たちは少し驚いた顔をしていましたが、その言葉が届いていると感じられました。
例えば、道徳科授業が始める前に、定期的にペップトークを意識した声かけをしてみてはどうでしょうか。「恥ずかしい」「間違えたらどうしよう」ということを想像させるのではなく、「発表している自分」「対話を楽しんでいる学級」を想像できるような言葉をかけてあげるのです。そうすることが活発な対話を生むための一つの手立てになると考えます。
《参考引用文献》
浦上大輔『相手をやる気にさせる話術 PEPTALK』(フォレスト出版、2017)
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