2021/12/18

心理主義


 河野哲也氏の著書『道徳を問い直す リベラリズムと教育のゆくえ』について述べていきます。河野氏は著書の中で「心理主義」について言及しています。

(以下、抜粋)

 何人かの社会学者たちは、現代の日本における心理主義化の傾向を指摘している。

 心理主義とは、あらゆる社会の問題を、個人の心の問題に還元してしまう態度をいう。つまり、社会のなかで何か問題が生じれば、それはそれを引き起こした個人の心の問題であり、その個人の心のあり方を改善し、そうならないように、個人の教育を変えなければならないとする考え方である。

(以上)

 例えば、教材「かぼちゃのつる」で、つるを伸ばそうとするかぼちゃの行為を「わがまま」と捉えることは、まさに心理主義的な考え方ではないでしょうか。「およげないりすさん」で、りすを背中に乗せてあげることを善い行為と捉えることも、心理主義から生まれる考え方だと思われます。

 さて、著者である河野氏は、心理主義化された人間の問題として、つねに自分の内面と自分の行動に注意を集中することになり、その結果、社会を運営している権力を持った人びとを批判することなく、弱い人びとの問題行動ばかりを攻撃するようになるということを挙げています。

 このことに関しては、現状の道徳科授業で多面的・多角的に議論させることが心理主義を脱却するための見方・考え方を獲得させることにつながるのではないかと私は考えています。


《参考引用文献》

河野哲也『道徳を問い直す リベラリズムと教育のゆくえ』(ちくま書房,2011)

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