「はしの上のおおかみ」について、本日は「役割演技」を取り入れた授業づくりのポイントを考えていきます。
本教材の授業を参観していると、多くの授業で「役割演技」が取り入れられています。「役割演技」のよさを伝えたいと思っている私にとって大変喜ばしいことではありますが、その演技にもう一つトッピングをしてはどうかと思うことも多いです。
例えば、「くま」が「おおかみ」に親切にする場面があります。その時の演技のポイントとして、「そっとおろしてあげた」という記述に注目させてはどうでしょうか。
「そっと」とは、どのような時に使う言葉なのか。それは、大事なものや自分より小さなものにふれる時に使う言葉になります。くまにとってのおおかみは「大事な存在」であることが伝わってきます。その大事な存在であるおおかみへのやさしさが伝わってくる行為であり、そのやさしさにふれたからこそ、おおかみの心情は変容したのだということが分かります。
演技の際、その「そっとおろしてあげる」という動作に着目させます。言葉だけでは伝わらないやさしさを、演技を通して感じ取らせるのです。教師があえて雑に演じてみることで、その違いを強調させてもいいでしょう。
おおかみがうさぎに優しくする場面についても、「そっとおろしてあげた」に再度着目させます。そっと下ろそうと思うと、ゆっくりと、手を添えるように、そして優しく微笑みかけるような演技となるでしょう。その演技を見ていた観客役の児童にその感想を発言させることで、「おおかみの優しさ」や「親切にすることのよさ」を学級全体で共感させます。
また、おおかみがうさぎを下ろした後も重要となります。なぜ一本橋を通してくれたのか、うさぎの立場から質問をさせてはどうでしょうか。「前は意地悪だったのに、なぜ通してくれたのですか?」と尋ねると、おおかみ役の児童はなんと答えるでしょう。その際に答える「だって、・・・」に続く言葉が、本教材で獲得させたい学習内容となります。即興的に答える必要があるので、演者の本音が表出されます。その本音をみんなで共有し、観客役の児童も自らの考えと比べたりすることで価値理解を深めることができるのです。もし即興的に言葉が出てこなければ、「今、おおかみさんは頭の中で答えようとしています。演技を見ていたみんななら、何と伝えるかな?」と観客の児童に答えさせてあげもいいでしょう。
このように、役割演技をすることが目的となるのではなく、演技をすることでどのような効果や発言をねらうのか、授業づくりを進める際にきちんと考えておきたいものです。
(引用参考文献)
『道徳教育2021年4月号』(明治図書出版、2021)
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