2021/11/20

2年生「およげない りすさん」(1)


 低学年の定番教材「およげない りすさん」について、内容項目B「友情、信頼」として考えていきます(「公正、公平、社会正義」として扱われることもあります)。

 この教材を通して子供たちに何を考えさせるのか、いわゆる「学習内容」を明確にすることが授業づくりの第一歩です。学習指導要領解説での低学年学習内容は「友達と仲よくし、助け合うこと」と記載されています。

 まずは、文末の「こと」に着目してみましょう。この2字がついていることで、届けられているメッセージが異なります。この「〜すること」という文末は、「助け合うことが大事なんだよ。分かりましたか?」と教える授業を目指すのではなく、「助け合うことは、なぜ大事なんでしょうか。」「いつでも助け合うことはできますか。」というように、「〜することについて対話をさせる」ことが求められているという認識になります。

 ところで、「仲良くする」「助け合う」という言葉は低学年でも理解している言葉です。これを考えさせようとしても、おそらく学習内容の理解は曖昧なものとなってしまいます。本教材だからこそ考えさせられる「仲良くする」や「助け合う」を明確にしていく必要があるのです。また、学級の児童を想定した際に、どのような対話が望ましいのか。そのようなことを授業者はできる限り具体的にイメージをすることが必要です。

 例えば、学習内容が「一人ぼっちの人に声をかけることのよさ」になるかもしれませんし、「みんなといっしょに遊ぶ喜び」を実感させることかもしれません。

 この「学習内容を明確にする」ということが、いわゆる「教材分析」と呼ばれるものになるのではないかと私は思います。なぜなら、道徳科授業は「教材を教える」のではなく「教材で教える」からです。そして、学習内容に応じて教材の扱い方は異なるべきなのです。「道徳科授業に正解はない」と言われてるのは、そのようなことが関係しているからだと言えるでしょう。

 日々の道徳科授業と同様、授業づくりに正解はありませんが、よい授業の共通点はあります。それが「学習内容を明確にすること」です。そして、学習内容が明確になれば、そこから対話場面や発問を考えることができるようになるのです。

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