2021/11/07

人権課題を扱う授業「ハンセン病」


 光村図書5年生に「誰もが幸せになれる社会を」という教材があります。「ハンセン病」について扱った教材です。ハンセン病元患者に関する差別は、法務省が定める主な人権課題の一つとして、全国民が解消に向けて取り組むべき課題と設定されています。

 ところで、皆さんはハンセン病について詳しく学んでいるでしょうか。恥ずかしながら、私は自ら学ぼうとできていませんでした。病気の原因や症状、差別の歴史や元患者の方々の苦しみ、そして現状をよく知らないまま教師をしていました。

 3年前、自主研修でハンセン病元患者の療養所を訪れる機会がありました。その時、心に強く刺さるものがありました。心をゆさぶられ、無知を恥じ、差別の現実を知り、自分もこの差別をなくすための行動を起こしたいと思いました。

 私は道徳科の研究を進めていたので、道徳科授業を通してハンセン病差別について学ばせたいと考えました。あいにく勤務校が使用している副読本(当時は教科化前)にハンセン病の教材はなかったので、教材を自作することにしました。とはいえ、使用した素材は現地で撮影した風景写真1枚だけ。考えさせたいことが明確であったので、その写真(美しい海)と差別の現実という「ずれ」を用いて、差別について考え議論させようと決めました。授業日は、3学期の参観日。その年の最後の参観日に授業を公開しました。家庭でも「差別」について考えてほしいと願ったからです。

 当日の板書計画はこのようなものでした。

 授業前半は、教師と子供たちの対話を通して「知識的側面」を学ぶ時間としました。道徳科授業は本来「価値的・態度的側面」を学ぶ時間ではありますが、まずは知識がないと「差別の現実」を知ることができないと判断し、前半は知識獲得の場としました。

 主な学習活動のねらいは以下の通りです。  

・美しい風景写真と差別の現実との「ずれ」を起こすことで学びへの必然性を生む。

・治療薬が開発されてから法律が制定されるまでの期間を知ることで、驚きと怒りを感じさせる。

・「ハンセン病差別はなくなったのか」という問いに対して自己判断をさせ、思考を深めさせる。

 3年前の授業となりますが、今でもその時の熱気を覚えています。子供たちは真剣に考え、差別に対しての怒りを覚え、自分の思いを伝えようとしていました。

 昨日、療養所を再訪することができました。学芸員の方のお話を拝聴しながら、あの時に子供たちの心に芽生えた「差別への怒り」と小さな芽が、今でも少しずつ育っていることを願いました。


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