2021/11/01

道徳を図解する(2)「場面発問」


 愛知学泉大学教授 前田治氏の著書『道徳を図解する』から、道徳科授業での「場面発問」について考えていきます。

 前田氏は場面発問について、「文字通り教材の場面における道徳的判断、道徳的心情などや、登場人物の行為・行動の裏側にある内面についての発問であり、子どもたちが登場人物に自己投影させるための発問である」という内容を述べています。発問例として、1年生「はしの上のおおかみ」での発問を紹介しています。

・オオカミ(主人公)はどう考えていた?(判断力)

・オオカミ(主人公)はどんな気持ち?(心情)

・オオカミ(主人公)のこの行動に込められた願いは何?(心情)

・オオカミ(主人公)はどうしていこうと思った?(実践意欲)

 

 ここで注目したいのは、4つの発問例の主語は「おおかみ(中心人物)」となっていますが、授業のねらいによって問い方が異なるという前田氏の主張についてです。この「ねらい」に合わせて授業展開や発問を考えるという視点を授業者はもつべきであると、私は思っています。

 なお、「場面発問」という言葉については、立命館大学の荒木寿友氏の著書「ゼロから学べる道徳科授業づくり」の言葉を紹介しておきます。

(以下、抜粋)

 場面発問とは、読み物資料のある場面において、主人公などの気持ちや行動の理由を問う発問です。(中略)この発問の利点は、子どもたちが読み物資料を丁寧に読んで、話を理解する上では非常に効果があるというところにつきます。登場人物の気持ちの変化や考え方がどう変化していったのか、一つ一つ丁寧に押さえていくことによって、その授業で扱っている道徳的価値の理解をすすめることが可能です。

 ただし、場面発問の限界もあります。場面発問の多い授業は、資料を読み込むことに焦点を当ててしまうので、登場人物の心情についての理解は深まりますが、読み物資料は自分とは関係のない話だ、あるいは「きれいごとだよね」と子どもに解釈される可能性がありますし、子どもたちに「こう答えたらいいんでしょ」と「わかっていること」を伝える授業になってしまう可能性があるということです。

(以上)

 道徳科授業における「発問」について、今後も研究していきたいものです。


(引用参考文献)

前田治『道徳を図解する』(大学教育出版、2020)

荒木寿友『ゼロから学べる道徳科授業づくり』(明治図書出版、2017)

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