2021/11/04

1年生「はしの上のおおかみ」(3)


 「はしの上のおおかみ」、今回は「日常生活につなげる」という観点から考えていきます。

 この教材は、「おおかみ」や「くま」、「うさぎ」が登場します。日常生活と異なる世界観になっていますが、1年生の子供たちなら、「おおかみ=自分」として、人物になり切って考えやすいお話だといえるでしょう。

 さて、道徳科の授業では「自己の生き方についての考えを深める」ことが大事になります。本教材は「おおかみ」の視点で考えていく展開が多いのですが、そこからどのように自己の生き方を考えさせることができるのかについて述べていきます。

 子供たちが本教材を生活と関連させて考えるとすると、「おおかみ」は自分自身となります。では、「くま」はどうなるでしょうか。大きくて力強くて優しい「くま」は、6年生のお兄さん・お姉さんだと想像する子もいるでしょう。「おおかみ」と「くま」の関係から、自分自身と6年生との関係をふり返ること(自己理解)ができたとすると、まさに「自己を見つめる」という学習活動になるといえます。

 そうであるならば、導入で「親切にした(された)経験はありますか」と尋ねたりする際に、6年生のお兄さん・お姉さんとの関係(ペア遊びや登校班など)を思い浮かばせ、優しくされた喜びに共感させておくことが有効かもしれません。さらに、親切にしている側が嬉しそうにしている写真を見せることで、「なぜ親切をしている人が笑顔なのかな?」という問いを子供たちに抱かせることも考えられます。

 また、終末の場面でお兄さん・お姉さんからのメッセージ(僕たちも、みんなに親切にしていると嬉しい気持ちになっているよ)を紹介したりすることで、「親切にすると自分も嬉しくなる」という理解をさらに深めることもできるでしょう。

 「うさぎ」についても、もしかしたら自分より小さな子(弟や妹、園児)を想像したり、身近な友達を思い浮かべたりする子もいるでしょう。そこから、身近な目標(今後の課題)を考えさせることにつなげていくことができます。

 お話の世界と子供たちの身近な社会をつなげてあげることは、道徳科授業での有効な手立てになるということです。もちろん、教材の人物の視点のまま授業を終えることもあります。しかし、少なくとも授業者はお話の場面がどのように現実とリンクするのかを意識しておく必要はあるでしょう。それが、「読み物道徳からの脱却」のポイントにもなるといえます。

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