前日、以下の三点の視点を本教材の授業づくりで大事にしたいと述べました。
本日は、上記の視点をもとにして授業展開のポイントを考えます。
(1)「仲間はずれ」「一人ぼっち」が生まれることを理解させる。
ぴょんたの言動により、ぽんきちだけが怒られることになりました。仲良しのわんたを助けるために、ぽんきちが一人ぼっちにされたのです。ここで気をつけたいのは、「怒られる」ということに注意を向けさせるのではなく、ぴょんたの言動によって仲間はずれや一人ぼっちが生まれたことに目を向けさせることが大切になります。
(2)自分も周りも嫌な気持ちになることに共感させる。
ぽんきちはきっと悲しい気持ちになったことでしょう。それは、花壇を踏みつけてしまったことをくまおじさんに厳しく怒られたからでしょうか。「怒られたから、悲しい気持ちになったんだよね?」と尋ねてみると、子供たちはどのような反応をするでしょうか。「いや、そうではない!自分一人だけが悪者にされたからだ!」という発言が生まれないでしょうか。怒られることは嫌なことです。しかし、誰かが大切にしている花壇を踏みつけてしまったのなら、それは怒られて仕方のないことかもしれないと2年生の児童も考えるでしょう。本当に悲しいことは、その行為を自分一人のせいにされたことであり、その悲しみを子供たちに気づかせる必要があるのです。このままでは、ぽんきちは心に深い傷を負うかもしれません。ぴょんたのことも嫌いになってしまうでしょう。「このままでいいのかな?」「わんたは怒られなくてよかったね。わんたは嬉しかったのかな」ということも子供たちに尋ねたいところです。
(3)みんなが楽しく、よい気持ちになれることに気づかせる。
ぴょんたは、長い間下を向いて考えた後、走り出しました。その後の様子は教材に描かれていません。もしかしたら、ぴょんたもすごく怒られたかもしれません(中学校の生徒指導の先生に言わせると、一番怒られるのはぴょんたになるとのことです)。では、ぴょんたは下を向いている間に、どのようなことを考えたのか。何に気づいて走り出したのか(中心人物の変容)、その変容場面の葛藤を尋ねることは大変有効になります。
さて、変容場面の葛藤について子供たちに尋ねると、どのような意見が出るでしょうか。
①「くまおじさんに嘘をついたことを謝ろう」
②「一人ぼっちにさせてしまったぽんきちに謝りたい」
③「仲良しのわんたに嫌われたくない」
④「自分一人が仲間外れにされると思った」
上記の①は本教材のねらいとは異なり、「正直、誠実」の内容に近くなります。子供の発言を受け入れつつ、「広げるための問い返し」をしていきたいところです。②の意見が出てきたら、その考えについて全体で深めていけばよいでしょう。
さて、③と④の意見はいかがでしょう。「自分は仲間はずれにされたくない」「一人ぼっちにされてさみしかった」など、子供たちの素直な思いや過去の経験から出される発言かもしれません。このような意見を大事に受け取って問い返すことで、道徳的諸価値のよさに気づかせることができます。例えば、「今のぴょんたなら、ぽんきちの気持ちがよくわかるかな?」「わんたの姿を見て、ぴょんたが気づいたことはどんなことかな?」などのように問い返したあと「お隣の人とお話してごらん」と声をかけると、きっと活発なペアトークが生まれるのではないでしょうか。
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