誰かに何かを伝える際に、「〜したほうがいい」と自分の考えを押し付けてしまうことがあります。相手が子どもであれば、なおこの傾向が強くなります。この伝え方には「他者の意識を変えよう」とする思いが隠れています。しかし、他者の意識を変えることは困難であるという事実をきちんと認識しておく必要があるでしょう。
さて、他者との対話について、矢原(2016)の著書の一節がとても参考になります。
(以下、引用参考抜粋)
ビューロー=ハンセンによって促されたのが、「あれかこれか」(either-or)から「あれもこれも」(both-and)へのパースペクティヴ(見通し)の変化である。1984年の秋頃まで、アンデルセンたちはセラピーにおいて家族らに何らかの指示をおこなっていた。「あなた方の状況はこうです」「だから、このようにしてください」といった具合だ。そうした振る舞いの前提には、専門家こそが「正解」を有しているという思い込みが存在する。しかしビューロー=ハンセンは、そのような特定の見方にたつことの危うさを指摘した。彼女は施術をおこなう相手の身体の内側から、常に多様な声を受け止めていた。やがて、アンデルセンたちの話し方は、「あなたがたの理解の仕方に加えて、僕たちはこんなふうに理解しました」「あなた方がしてきたことに加えて、こんなことは想像できるでしょうか」というふうに変化していった。それは、一見ささやかな、しかし、決定的な変化であった。
(以上)
何かを伝えたときに、「そんなのは納得できない」「おかしいと思う」という反応があったとします。感情的に反論を述べられることもあるでしょう。その意見は、相手の正解なのです。そうであれば、その正解はきちんと受け入れてあげることが大切になります。その上で、「私はあなたの言葉を聞いて〜と思いました」「その考えに加えて、〜という考え方もできないでしょうか」「私の考えとあなたの考えの共通点は〜ではないでしょうか」というように、「あれもこれも」という意識で対話をすることが大事なのではないでしょうか。
《引用参考文献》
矢原隆行『リフレクティング 会話についての会話という方法』(2016,ナカニシヤ出版)
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