人権教育で大事なことはカリキュラム・デザインである。これが私の「人言教育の推進」に関する現状理解です。
例えば、人権課題の一つである「ハンセン病」を授業で扱うとします(光村の5年生教科書に「だれもが幸せになれる社会を」という教材があります)。道徳科授業で、差別・偏見を許さない心を育てようと考えます。いわゆる、人権教育における『態度的側面』の育成です。しかし、「ハンセン病」に対する知識がなければ、その心の育ちは不十分なものになる可能性があります。そこで、人権課題に対する正しい知識を得る学習を設定する必要が出てきます。専門家の方にお話を聞く機会を設けるなどが考えられます。これが人権教育における『知識的側面』の育成になります。そして、総合的な学習の時間に、自分たちでできることを考え、実際に差別・偏見の解消につながる行動を一つ起こしてみる。これは『技能的側面』の育成になります。このような「カリキュラム・デザイン」を大事にすることが、人権教育の推進において大変重要になるのではないかと思っています。
上記のことに関して、一つの経験を紹介します。ある年、教室に手話の本を置いていました。合唱曲に合わせて手話の練習をすることもありました。手話を知ってほしい、使えるようになってほしいという担任としての願いでした。
ある日、その手話を使って授業中にこっそりと会話をする子がいました。秘密の暗号のように、ひそひそと学習内容に関係のないやりとりをしていたのです。これは、「手話を使う」という技能的側面を身につけさせたいという担任の想いだけが一人歩きし、障害のある方の願いや苦しみを理解しようとする態度的側面や、手話が生まれた背景や社会の障害者差別に対する施策などの知識的側面の学びが不十分だったから起こったと想像できます。
上記の例からもわかるように、様々な人権課題を解消しようする社会の担い手の育成に向けて、どのように学びをデザインするか。人権教育の推進にはこのカリキュラム・デザインが大事になるのです。
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