先日、範読後に感想を伝え合うことの意義について述べました(5月27日の記事)。感想を話し合わせることで他者との感じ方の違いに気づかせるとともに、学習の視点を揃えることができると提案しています。この提案に関して、田沼(2022)の著書が参考になります。
(以下、著書より抜粋)
例えば、35人学級で同じ道徳的問題を提示したとすると、そこには35通りの個別な「問い」が存在することとなる。それを受容し、道徳学習のスタートラインにすることが大切である。
もちろん、その「問い」の中に似通ったもの、視点が異なるもの、場合によっては真逆の疑問が生ずるかもしれない。それらを課題探求しようとしていくところに「道徳学習」が成立するのであるが、当然のように個別の課題追求では思考が堂々巡りして多面的・多角的な思考が実現されない。そこで、道徳科授業の導入ではそれら個別の「問い」を意図的に披瀝し合う場を設け、語らいを通して摺り合わせ、調和的に調節し合い、学習集団全体の価値理解への合意形成プロセスを経るための共通追求道徳課題設定を行うこととなる。
このようなモデレーション手続きを踏むことで追求すべき道徳学習課題が明確となり、共有され、全員が同じ土俵に立ってその課題追求を目指すことが可能になるのである。
(以上)
範読を聞くことで生まれる違和感やもやもやのことを田沼は「個別の問い」と呼び、その「個別の問い」を導入場面で出し合い、調和的に調節することで「共有の問い」を設定することが大事であるということです。
《引用参考文献》
田沼茂紀『道徳科教育学の構想とその展開』(2022,北樹出版)
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