2022/04/03

道徳教育と人権教育


 道徳教育と人権教育について、両者の違いを「思いやり」を例にして考えてみます。

 道徳教育では、他者を「思いやる」という行為について多面的・多角的に考えます。他者との対話を通して自身の過去を想起したり語ったりすることで、自分の生き方についての考えを深めます。

 しかし、社会に存在する不合理(差別、偏見)は、「思いやり」という態度(心情)だけで解消できるものではありません。正しい知識が必要であり、行動するための技能も求められます

 例えば、家族が病気になったとします。家族を心配し、優しく接してあげたいと強く願う心情は、まさによりよく生きるための道徳性でしょう。家族と共に歩んできた過去を想起し、その時の喜びを思い出す。よくなることを願い、少しでも安心を届けようと思いやる。まさに、家族という他者と接することで自分の生き方を考えているといえます。

 しかし、その「思いやる」というやさしさだけでは、その現状を打破できません。病気になった家族がよりよく生きるためにどのような支援を受けられるのか、どこに相談すればよいのか、どのように手続きをするのか、そのような知識や技能も必要です。

 人が幸せに生きられる社会を構築するためには、道徳教育で育てる「態度(心)」と、人権教育を通して学ぶ「知識」と「技能」が必要になるということです。両者が学校教育の礎であり、同時に両輪でもある理由がここにあります。

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