道徳科授業の効果的な手法である「役割演技」の秘密を解き明かしていくシリーズです。
「役割演技」を二つの場面に区切ることができます。それは、「演じている」場面と、演技後に演者と観客(または観客同士)が対話する場面です。ここでは、後者について述べていきます。
演技後、一般的には以下のような手順で話し合われます。
(1)演技を観た観客の感想を尋ねる。
(2)観客の感想について、観客が話し合う。
(3)観客の感想を聴いて、演者がどのように感じたかを尋ねる。
(4)演者の感想を聴いて、観客が再度話し合う。
(5)演者の感想を聴く。
この手順は一つの例ですが、演者と観客を意図的に分けていることがわかります。この手法は、心理療法における「リフレクティング」になります。
リフレクティングについて、トム・アンデルセンは以下のように述べています。
(以下、抜粋)
では、改めてリフレクティングとは何をすることなのでしょうか。「はじめに」でも述べたように、それは「はなす」ことと「きく」ことから成り立っています。そう言われると、あまりに当たり前のようで拍子抜けしてしまうかもしれません。しかし、それが日常的に行われている会話は話し合いと異なっているのは、そこでは、より広い文脈において「話す」ことと「聞く」ことを丁寧に「行きつ戻りつ」することができるための仕組みが適切に工夫されているという点です。リフレクティングにおいて、「はなす」ことを外的会話(他者との会話)、「聞く」ことを内的会話(自分との会話、あるいは、自分のうちなる他者との会話)と呼びます。この二つの会話の区別はとても大切なことなので、ぜひ心に留めておいてください。リフレクティングは、この二種の会話を丁寧に重ね合わせ、うつしこみ合わせながら展開していく(すなわち、会話について会話する)ための工夫に満ちた方法なのです。
(以上)
このように、役割演技を用いた話し合い(演技後の対話)は、「話す」と「聞く」を丁寧に「行きつ戻りつ」する仕組みが工夫されている手法ということができます。
《引用参考文献》
トム・アンデルセン著 鈴木浩二監訳『リフレクティングプロセス 会話における会話と会話』(金剛出版、2015)
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