2022/04/16

「あれか、これか」から「あれも、これも」へ


 トム・アンデルセンは、リフレクティングのやり方についていくつかのルールを設けています。そのうちの一つは、以下のようなルールです。


(以下、参考文献より抜粋)

 あくまでその場の家族たちの会話内容にもとづいて反応や解釈を行い、他の文脈からそれを持ち込まないということ。これと同時に、断定的な話し方は避け、「私は・・・と感じました」「僕には・・・と聞こえた」「ひょっとすると・・・かもしれない」といった話し方を用いる。このようにすることで、家族たちの会話に沿いながら、唯一の正解を競うことなく、多様な選択の可能性(チームの話に対する受け取りの自由さ)が確保される。

(以上)


 このルールを設けたのには、会話(対話)に対する考え方の転換が重要であるという姿勢があるようです。リフレクティングの中に唯一の「正解」や「真理」が存在し、専門家こそがそれを有しているという考え方(すなわり「あれか、これか」)から、物事には多様な見方があり、さまざまな意見の交換からさらに新たな会話が展開していくことを望ましいとする考え方(すなわち「あれも」「これも」)への転換が求められているのです。

 道徳科授業では、「子供たちの意見を受け入れる」「誰の意見も否定しない」という暗黙の決まりがあります。この決まりが道徳科授業に存在する理由には、上記の『「あれか、これか」から「あれも、これも」への転換』という願いが隠されているのではないかと私は思いました。


《引用参考文献》

トム・アンデルセン著 鈴木浩二監訳『リフレクティングプロセス 会話における会話と会話』(金剛出版、2015)

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