2022/04/13

役割演技とリフレクティング(2)


 道徳科授業の手法である「役割演技」の秘密を解き明かしていくシリーズ第2弾です。

 前述した通り、「役割演技」は二つの場面に区切ることができます。それは、「演じている」場面と、演技後に演者と観客(または観客同士)が対話する場面です。ここでは後者について述べていきます。

 前回、役割演技を用いた話し合い(演技後の対話)は、「話す」と「聞く」を丁寧に「行きつ戻りつ」する仕組みが工夫されていると述べました。そこで大事になることは、話し手と聞き手の立ち位置です。

 トム・アンデルセン(2015)は、心理療法における「リフレクティング」で大事にすべき点として、「聞かなくてもいい自由」を保障することだと述べています。例えば、「家族達と同室で話す場合、家族たちの方に目を向けて話さず、チームのメンバー同士で向き合って話すこと。これによって、聞いている人たちを視線で縛ることなく、「聞かなくてもいい自由」が確保される」としています。

 これらのことから役割演技における対話の在り方を考えてみます。演技の感想を観客役の児童生徒に発表させる時、演者役はどこにいますか。教室前面(黒板前)に座っているとすると、演者は観客役の視線で縛られてしまいます。要するに「聞かなくてもいい自由」が保障されないのです。逆に、演者の感想を述べさせる際、誰に(どこに)向けて話をさせますか。観客役の児童生徒に向けて感想を述べさせると、演者の視線が観客役の児童生徒を縛ってしまいます。演者が感想を述べる際には、観客役の児童生徒が視界に入らぬよう、教師に目を向けさせて話をさせることが望ましいということになります。

 このように、「視線に縛らせない」ということを役割演技における対話場面では大切にしてみてはどうでしょうか。

 

《引用参考文献》

トム・アンデルセン著 鈴木浩二監訳『リフレクティングプロセス 会話における会話と会話』(金剛出版、2015)

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