教材研究 小学校1年生「二わのことり」〜発達段階を考慮して〜(4)
【公正,公平,社会正義】
これまでは、内容項目B「友情,信頼」で授業を考えてきましたが、今回はC「公正,公平,社会正義」での授業を考えていきます。なお、内容項目は教科書会社ごとで定められていますが、絶対的なものではないということもご承知おきください。学級の様子や教師の意図によって内容項目は変更しても大丈夫です(その際、年間計画の見直しや管理職への相談は必要になります)。
さて、低学年の「公正,公平,社会正義」の内容は、「自分の好き嫌いにとらわれないで接すること」です。自分の好き嫌いに囚われていると、仲間外れや一人ぼっちになる人が出てしまいます。逆に仲間外れがいないと、自分もみんなも楽しい気持ちになります。低学年ですから、「仲間外れがいないと、みんなが楽しくなる」という結果を実感させることが大切になります。
また、注目したいのは、「みんなが」という言葉です。B「友情,信頼」では「個と個」という視点で考えたのに対して、「公正,公平,社会正義」では「集団の中の一人」という立場で考えていきます。
【ひとりぼっちのやまがら】
この教材は、自分の誕生日会に友達を招待したやまがらが一人ぼっちになっています。一人ぼっちの構図が大変分かりやすい教材です。中心人物であるみそさざいは、なぜウグイスの家に行ってしまったのでしょうか。児童に尋ねると、
「ウグイスの家は明るくて近いところにあるから」
「みんなも行ったから」
「歌の練習が楽しそうだから」
などの意見が出てきます。どれも正解です。
ここで、内容項目の「好き嫌いせずに」という言葉に注目しましょう。みそさざいは、うぐいすのことが好きで、または、やまがらのことが嫌いで、うぐいすの家に行ったのでしょうか。きっと、そうではないと想像できます。
そこで、例えば、みそさざいは「歌が好き」だったのかもしれないと仮定すると、歌の練習ができるうぐいすの家に行きたいという思いが生まれます。この仮定の場合、導入は「みんなが友達として楽しいと思うことは何?」というような発問が予想されます。そして、「大好きな歌をうたっているのに、なぜ全然楽しくないのかな?」という発問につなげていくこともできます。「音楽会の練習より、友達のために誕生日の歌をうたってあげる方が楽しい」というような意見も出てくるかもしれません。このように、導入〜展開(前段)〜展開(後段)の発問がつながると、授業の軸も生まれます。
【うぐいすの家から黙って飛び去った!?】
この教材を読んでいると、「えっ!みそさざいはうぐいすの家から黙って出て行ったの!?」と驚きを感じる人もいるかもしれません。「黙って立ち去る」という行動の是非を問いたくなるところですが、これは低学年の発達段階を考慮して、みそさざいとやまがらの友情関係に焦点を当てさせたいという意図があるのだと想像できます。ですから、内容項目B「友情,信頼」の授業では、あまりふれなくてもよいところかもしれません。
しかし、子ども達から「うぐいすがかわいそう」「黙って出ていってはダメだ」という発言があることも予想されます。さて、この意見をどのように取り上げましょう。
実は、この時の教師の反応が「考え議論する」学級をつくる土台づくりにつながるのです。そのような意見を教師が取り上げることで、「多面的・多角的に発言をしてもいいのだ」というメッセージを子ども達に届けてるのです。教師の「児童の素直な意見を受容する」という姿勢が試されているのです。このような意見を発言できる子は、もしかしたら「みんなといっしょ」ということを強く意識している子かもしれません。その発言の奥にある心を理解しようとしてあげてください。(ここでの対応のやりとりは字数の都合で省略いたします)。
さて、今回は内容項目C「公正,公平、社会正義」として考えています。この「黙って飛び去る」という行動も、「みんなが」という「集団への意識」につながっていきます。「みんな」であるうぐいすや他の小鳥達が、もしかしたら嫌な思いをしたかもしれないからです。
では、どうするか。子ども達は様々な「よりよい行動」を発表すると思います。しかし、その行動の奥にある「大切にしたい心」までを自分一人で発表できる子は、1年生では少数かもしれません。そこで、様々な「よりよい行動」に共通する「大切にしたい心」を学級全体で考えさるとともに、「みんなが楽しい気持ちになっている」様子をたくさん想像させてあげたらどうでしょうか。結果に着目をさせることで、「みんなで仲良くしたら、気持ちがいい」という道徳的心情の育成をねらうのです。
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