役割演技をやってみる(3)
【演技の練習は必要ですか?】
役割演技に取り組ませるために、どのような準備をしたらよいでしょうか。このような質問を受けることもあります。最初にお伝えしたいことは、事前に演技の練習をさせることは不要だということです。演技をするということが目的ではないからです。それに、シナリオ通りにうまく演じることも目的とはしません。即興的に演じさせることで、演技の中の世界と現実とつなげ、道徳的価値や自分自身に対する気づきを得ることを目的とするのです。
「演技」という名前がついているので勘違いを起こしやすいのですが、実際の役割演技は、教材の人物と自分が重なります。演技中の言動が人物の言動と一致するのです。それゆえ、誰かから求められる人物像を演じるのではなく、教材の設定や心情理解をもとに、ありのままの自分で役割演技という対話をすればいいのです。
【演技のタイミング】
どの場面で役割演技を取り入れたら効果的ですか。このような質問を受けることもあります。正解は存在しませんが、道徳科授業における役割演技は、この二つの場面で演じさせることが多いようです。
(1)中心発問の場面
中心人物の変容が最も大きい場面です。授業者は人物の心情や変容の理由を問うことが多いでしょう。その問いに対して、子ども達は人物に自我関与して発言しようとします。その発言(行為)を演じさせることで、人物の心情を自分ごととして実感的に理解することをねらいます 。
(2)教材のその後
教材によっては変容する姿のないまま終わってしまうことがあります。そのような教材では、「教材のその後」を演じさせることも効果的です。「このあと、どのように感謝を伝えたのかな?」というように、明るい未来を想像させ、演技させるのです。道徳的価値についての深まった理解を基に即興的に役割が演じさせ、道徳的行為のよさを実感的に理解させる効果が期待できます。
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