2年生「るっぺ どうしたの」(2)
【自分ごととして考える】
るっぺを悪者(ダメな子)にしないでください。前回の記事でそのような趣旨のことを述べました。誰かを安易に悪者にするような学級では、子ども達の人権感覚は養われません。道徳教育が目標とする「他者と共によりよく生きるための基盤となる道徳性を養う」ことも難しくなります。
そこで大切にしたいことは、「自分ごととして考える」ということです。この教材をはじめて読んだ時、子ども達は誰の視点で教材の世界に入り込むでしょうか。きっと、ぴょんたやぽんこだと想像できます。低学年の子ども達は、「自分は何もしていないのに嫌なことをされる」という意識になりがちだからです。
しかし、子ども達は気づいていません。るっぺがやっているような朝寝坊や荷物を落とす(ランドセルを閉め忘れる)という行動を、自分もやってしまうことがあるのを。嫌なことがあった時に砂を投げることはなくても、悪口を言ってしまったり拗ねてどこかに行ってしまったりするのを。そう、るっぺは、子ども達自身なのです。
【人権教育の視点】
この構図は、人権教育での「差別」に関する学習とよく似ています。人権教育では、差別の事実を学ぶことを通して、「自分の心の中にある差別心に気づく」ということを大切にしています。この教材においても、自分の行動をふり返ることを通して、自分の中にある不注意やわがままに気づかせることが重要になるのではないでしょうか。安易にるっぺを批判させ、いわゆる「いいこと」ばかりを発言させて終わる授業ではなく、「自分も同じようなことをしているかもしれない。でも、これからは〜。」と考えさせたいのです。だからこそ、この教材では「るっぺの視点」で考え議論させることが求められます(るっぺの視点だけという意味ではありません)。
【るっぺ=自分】
なぜ、朝寝坊してしまうのか。起こされている時の気持ちを想像させることで、自分にも同じ経験があることに気づかせます。その上で、「なぜ、るっぺは朝寝坊をしているのか」と想像させてみたら、「寝るのが遅かった」「ゲームをしていた」「いつも起こしてもらっている」「学校に行きたくない」など、様々な理由が出てきます。実は、それらの理由は子ども達の現実かもしれません。「ルッペ=自分」として、日々の行動を内省し、自分ごととして発言をしているのです。
靴のかかとを踏むことは、「身の回りを整える」という内容になります。これは、服装だけでなく、整理整頓も含まれるでしょう。靴のかかとは踏んでいなくても、荷物の整理はいかがでしょうか。机の中、後ろの棚、道具箱の中。違うエピソードで考えさせることで、子ども達は自分ごととして捉えるようになります。
砂場の場面。るっぺに、いったい何があったのか。その背景をぜひ想像させてあげてください。「ほおをふくらませたまま」とあるので、きっと何か嫌なことがあったのでしょう。「友だちに向かって砂を投げる」という事実のみで考えさせるのではなく、その背景や困り感を想像させてから考えさせます。例えば、るっぺが砂を投げてしまう気持ちを理解させてから、「るっぺにどんなアドバイスしてあげる?」と尋ねると、子ども達は共感的な声をるっぺに届けるでしょう。その際には、砂を投げられて困っているぽんこの気持ちも想像させるといいでしょう。
【るっぺにアドバイスしよう】
授業後半、「るっぺにアドバイスをする」という展開が考えられます。るっぺに伝えることを通して、自分自身に「よりよい生活のアドバイス」をさせることになります。るっぺの背景や困り感を想像していなければ、そのアドバイスはどこか他人事で厳しいものとなるでしょう。しかし、るっぺ=自分となっている学級では、アドバイスの言葉を真剣に考えます。子ども達は気づいていませんが、そのアドバイスは自分に向けられるものになるからです。アドバイスの場面は子ども達それぞれが選んでもおもしろいですね。
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