2022/02/10

発問を考える〜リフレクティング・プロセスを参考にして〜


 トム・アンデルセンの著書『リフレクティングプロセス 会話における会話と会話』の以下の箇所を紹介します。

(以下、抜粋)

人々が関わっているのは「外部の」問題点ではなく、その問題点に関する彼らの理解である、というアイデアに基づいている。この極めて重要な一文から論理的に導かれるものは、我々にはその問題を叙述することも説明することもできないが、彼らの叙述と説明をただ叙述し、(彼らの叙述と説明に関する)我々の叙述に試験的な説明を与えることしかできないということである。それゆえ、「それは何でしたか?」「それはどうでしたか?」と質問する代わりに、「何を見たんですか?」「何を体験なさったのですか?」「何だと思われましたか?」「どう理解されましたか?」などと質問するのである

(以上)

  少し難解な記述ですが、私は上記の中から「発問」に関する重要なアイデアを見つけられると感じました

 道徳科授業の発問として、「この時、どのようなことを考えたのでしょう」「どんな気持ちだったでしょう」と尋ねることが多いようです。このような手法は「人物の着ぐるみを着て考えさせる」と呼ばれています。「私=人物」とさせることで、心情理解を促したり自分ごととして考えさせたりするのに有効な手法となります。

 しかし、その人物になったつもりで考えようとしても、教材によっては大変難しい活動かもしれません。そこで、教材の人物の問題(葛藤や変容)そのものを考えさせるのではなく、「その問題(葛藤や変容)を自分はどう思うのか」、「その場面を見て頭に浮かんだものは何か」ということを尋ねることも重要であると、上記のトム・アンデルセンの記述から提案できます。それは、「問題点に関する彼らの理解を説明させる」ということになります。 

 これを図で表現してみましょう。

 「この問題点は、あなたにはどのように見えますか?」「どのように理解しましたか?」のように尋ねることで、「問題点に対する理解」の説明をさせる。問題点を語らせるのではなく、問題点に対する自分の理解を語らせるということです。そして、その説明の中で考え方を整理させたり違いに気づかせたりする。このような対話を生むことが、見方・考え方の自覚(自己を見つめる)につながるのではないでしょうか。


《引用参考文献》

トム・アンデルセン著 鈴木浩二監訳『リフレクティングプロセス 会話における会話と会話』(金剛出版、2015)

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