本日は、向後善之氏・久保田健司氏の共著である『マンガでやさしくわかるオープンダイアローグ』から道徳科の授業づくりについて考えようと思います。
本書は、精神医療の現場で注目されている「オープンダイアローグ」の事例をマンガ形式で紹介するとともに、よりよい「対話」を生むためのポイントを分かりやすく説明してくれています。
なお、本書では、「オープンダイアローグ」は、ダイアローグ(対話)が基本になると述べています。また、「対話」とはお互いのことをあまりよく知らない者同士が、「知らない」ということを前提として行う意識的なコミュニケーションであり、さらに、お互いの違いに着目して、その違いの意味を探求していくコミュニケーションであると定義しています。
今回は、本書で述べられている「対話」のポイントの中から道徳科の授業改善に直結するものを3つ、日々の授業場面を想起しながら紹介します。
(1)マイクロ・イエス・クエスチョン
小さく「はい」ということのできる質問のことを『マイクロ・イエス・クエスチョン』といいます。児童生徒に『問い』を向き合わせる時、心の準備ができるようなマイクロ・イエス・クエスチョンから始めると、はるかに抵抗が少なくなるようです。
例えば、「さっきあなたが言ったことで気づいたことがあるのだけれど、説明してもいいですか?」「あなたがさっき言ったことについて、ひとつ仮説が浮かんだのですが、それがしっくりいくかどうか聞いてもらえますか」などがマイクロ・イエス・クエスチョンとなるようです。
(2)質問で締めくくる
授業者がなんらかのコメント、特に解釈を伴うコメントをした場合、それに対して児童生徒がどのように感じ、どのように考えたのかを確認することが大切になります。たとえば、「今、どのようなことを感じていますか」などと問いかけることになります。
(3)プリング・フィードバック
セラピストは自分に対するフィードバックを定期的に求めます。これを、『プリング・フィードバック』(pulling feedback)といいます。このことは、学校現場での指導場面においても重要なことだと言えるでしょう。「私は、あなたの話を正確に把握していますか?」と尋ねることで、教師が児童生徒から学ぼうとしている姿勢があることを示すことにもなります。
オープンダイアローグに限りませんが、プリング・フィードバックをすることにより、クライアント(児童生徒)とセラピスト(教師)の双方が対等性を確認することになります。そうしたやりとりが、多様性を生む土壌につながっていくと、本書では述べられています。
(引用参考文献)
向後善之 久保田健司『マンガでやさしくわかるオープンダイアローグ』(日本能率協会マネジメントセンター,2021)
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