先日紹介した千葉大学教育学部教授の藤川大祐氏は、著書『道徳教育は「いじめ」をなくせるか』の中で、学校教育の問題を以下のように述べています。
(以下、著書より抜粋)
学校教育は「標準」の家庭に合わせて実施すればよいという考え方があると言わざるえない。「標準」と言えない状況の子供は、こうした発想で排除されている。
(以上)
「標準」という概念をどのように判断するかの議論は必要かもしれませんが、このような考え方が意識の根底にあることを私達教員は決して否定できません。
藤川氏は、学習指導要領を用いて「標準と言えない状況の子供の排除」について説明しています。「学習指導要領の中に児童虐待やLGBT、外国にルーツを持つ児童生徒に関する記述がない」ということを例に上げ、このことが少数派には配慮せずに多数派にのみ通用する価値観を学ばせるものになっていると訴えています。また、国際理解・国際貢献についても、日本の学校で教育を受けるのは日本人のみであるかのように扱われていると危惧しています(注:日本語の理解が不十分な児童生徒への配慮などは記載されています)。
また、道徳教育がいじめをなくせるかという主題に対しては、「多数者の視点から脱却することなしに、道徳教育がいじめ防止に寄与するとは考えにくい」という結論を述べています。このことは、道徳教育に携わる者として強く意識する必要があるのではないでしょうか。
私達が日々の道徳科授業を考える時、内容項目に書かれていることを何も考えずにただただ正しいはずのものとして扱うのではなく、それがどのような視点で書かれているのか、少数派の苦悩も考慮されているのか、本当に実現可能なのか、そのような批判的な検討を取り入れる必要があると、この書籍から学ぶことができるでしょう。道徳的諸価値の理解を教師自身が多面的・多角的に考える必要があるということを知ってほしいと切に願います。
(引用参考文献)
1 藤川大祐『道徳教育は「いじめ」をなくせるのか』NHK出版 2018
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