【書籍から考える道徳科授業シリーズ】
本日も、野口裕二氏の『ナラティブと共同性 自助グループ・当事者研究・オープンダイアローグ』(青土社,2018)から、道徳科授業について考えていきます。
【ドミナント・ストーリー】
「ドミナント・ストーリー」とは、ある現実を支配している物語であり、疑う余地のないものとして存在している強固な物語であると野口氏は説明しています。また、「暗黙の前提」という記載もありました。大変理解しやすい表現です。
そうであれば、子供たちの発言の中にどのような「ドミナント・ストーリー(暗黙の前提)」が隠されているのか、その物語を見つけ出そうとすることが道徳科授業を深める重要な要素となる可能性があります。
また、野口氏はこのようにも述べています。
(以下、抜粋)
それ(ドミナント・ストーリー)を発見するためには、皆が一堂に会してそれぞれの物語を語らなければならない。対立する意見、一見関係のない意見や物語を雑多に並べてみて、それらの前提となっているドミナント・ストーリーを発見すること、そこから共通の「社会的現実」が立ち上がる。そして、ドミナント・ストーリーが発見されるとき、同時にオルナティブ・ストーリーも見えてくる。
(以上)
「オルナティブ・ストーリー」とは、物語を変容させ、新たに描き出された物語のことになります(なお、ドミナントストーリーは、「思い込みの物語」と訳されます)。
私たちの思考過程はこれまでの経験をもとにした「思い込み」がもとになります。失敗をして苦い思いをしたり他者から嘲笑されて悔しく感じたりした経験があるとすれば、そのことが「思い込みの物語」として表出されるはずです。
野口氏の著書を読んで強く思ったことは、我々教師が子供たちの物語ににもっと興味を抱き、敬意を示す必要があるということです。授業中の発言に対して、「〜ということですね」と安易にまとめようとしてしまうことは、子供たちの物語に興味を示していないことの現れです。教師の求めたい発言に強く反応をしてしまうことも同様です。一見関係のない発言があったとしても、その中には大切な物語(過去・現在・未来)があるのです。そして、それらの物語を雑多に並べることで初めて、社会(学級)を支配している「ドミナント・ストーリー」が見つかる。言うなれば、その授業での学習課題が見えてくるということになるのではないでしょうか。
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