「多数者の視点から脱却することなしに、道徳教育がいじめ防止に寄与するとは考えにくい」このように述べているのは、千葉大学教育学部教授の藤川大祐氏です。
藤川氏は、著書『道徳教育は「いじめ」をなくせるのか』の中で、道徳科授業における内容項目の扱い方に注目しています。特に「公正、公平、社会正義」を取り上げ、以下のように述べています。
(以下、抜粋)
公正、公平、社会正義を素朴に受け止めれば、公正等に背く態度は許されないのであるから、そうした態度をとる者に対して否定的な行為をしてもよいだろうということになりかねない。
(以上)
例えば、提出物を出さない者に対して、他の児童生徒の前で教師が厳しく非難する。そのことが児童生徒を追い詰めてしまう。このような事態に対して藤川氏は道徳科授業の役割として「たとえ秩序を守らない者がいたとしても私的制裁は許されないということを腑に落ちるまで学べるものであるべきだ」と述べています。まさに、現代のSNSでの誹謗中傷問題につながる論です。
子ども達は発達の過程で時に公正等に背く言動をしてしまうことがあります。それに対してみんなで非難してしまう集団をつくるのではなく、その言動について対話を重ね、みんなで許しあえる集団を作っていきたいものです。そして、そのような役割を道徳科授業は担っているという自覚も授業者は大事に持っておきたいです。
(参考図書)藤川大祐『道徳教育は「いじめ」をなくせるのか』2018 NHK出版
0 件のコメント:
コメントを投稿