「バスの中で」(3)(日本文教出版3年生)
(1)心の中のあらそい
教材の本文に「心の中で、二人のわたしがあらそいをはじめた」という箇所があります。わたしの葛藤が描かれています。この場面で「役割演技」を取り入れてほしいという著者の意図が見えてきます。この葛藤場面での役割演技にわたしも賛成です。なぜなら、中学年「親切、思いやり」の授業で大切にしたいことが「親切にする動機を考えさせる」ということだからです。
(2)役割演技(二重自我法)
この葛藤場面では「二重自我法」という演技手法が有効だと思われます。おばあさんに席をゆずりたいけれど、不安もある。どちらからというと不安の方が大きい。そのような児童を発言の中から見取り、中心人物(わたし)の演者Aに選定します。
さらに、もう一人の自分(補助自我)として、「席をゆずりたい!」と強く感じている児童を演者Bに選定します。演者Aの葛藤を、演者Bが共感的に支える演技になります。この二人が背中向けで接し、心の中の葛藤を演出します。
おばあさん役の児童も選定し、演者Aはおばあさん役を見ながら演技してもよいでしょう。そうすることで、その後の「自分でもおもいがけないほど、はっきりした声が出て、わたしは立ち上がっていた」という場面も含めた役割演技が可能になります。
なお、「二重自我法」については本ブログの以下のページを参照ください。
https://tman-doutoku.blogspot.com/2021/09/blog-post_9.html
(3)道徳的行為のよさを実感する演技
指導書では心の中のあらそいを終えた後の場面での演技が推奨されています。わたしとおばあさんによる役割演技を通して、「親切な行動を自ら行うことのよさを感じさせる」ことをねらいとする演技になります。
もちろんこの場面での役割演技も効果的です。おばあさんの「ありがとう」という言葉が、演者である児童の心に届き、親切のよさの実感につながります。道徳的実践意欲や態度の育成につながるでしょう。また、演者児童の実感を観客役の児童も共感することで、学級全体の道徳性の育成につなげることもできます。
多くの児童にとって「バスや電車で席をゆずる」という経験は非日常のものかもしれません。だからこそ、道徳科の授業を通して、役割演技などの手法を効果的に活用することでその道徳的行為のよさを実感させることが期待されているのです。
(参考図書)
R・J・コルシニ 2004 心理療法に生かす ロールプレイング・マニュアル 金子書房
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