2021/09/06

役割演技をやってみる(4)

役割演技をやってみる(4)

【演技の練習は必要ですか?】

 役割演技に取り組ませようとする際、「演技が上手にできるかどうか心配」という声が聞こえてきます。「事前に演技の練習をさせておこう」と思ってしまうかもしれませんが、その必要はありません。むしろ、事前に練習をさせてしまうことは逆効果になるでしょう。

 なぜなら、上手に演技をすることが目的ではないからです。「演技」という言葉がついているので「自分ではない誰か」を演じるイメージを抱きがちですが、役割演技で大切なことは「人物=自分」であるということです。ありのままの自分で対話(役割演技)をさせるのです。

 もちろん、演じるまでの場面でしっかりと自我関与させることが必要です。自分ごととして登場人物の心情や行動について考えているからこそ、役割演技が成り立つのだといえます。

 

【ウォーミングアップ】

 演技の練習は不要です。しかし、演技に向けての布石は必要になります(この布石をウォーミングアップということもあります)。では、どのような布石が必要なのでしょうか。授業前と授業中に分けて紹介します。

 まず、授業前です。日々の学級づくりのなかで、互いに認め合う関係性を子ども達は感じられているでしょうか。教科学習の場面でも、友だちの発言を大切にしようとする風土はあるでしょうか。演じることに恥ずかしさや緊張を感じてしまうのではなく、この学級なら大丈夫という安心感があれば、自発的・即興的に演じることができます。役割演技という手法がきっと大きな効果を発揮することでしょう。

 次に,授業中の布石です。子ども達の発言を注意深く聞き取り、誰の視点で思考しているかを教師が見とります。必要に応じて「あなたは〇〇の視点で考えているのですね」と、視点を確認してあげます。また、「(人物)には、どのように見えていますか?」など、登場人物の視点で見える景色や気づきを尋ねていきます。子ども達と登場人物の距離を少しずつ近づけていくのです。これは、自我関与を促す手立てにもなります

 このような布石(ウォーミングアップ)を重ねていくことで、効果的な役割演技が生まれるといえるでしょう。


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