2021/09/24

オープンダイアローグ 私たちはこうしている(書籍)から考える(2)


 本日も、森川すいめい氏の『オープンダイアローグ 私たちはこうしている』(医学書院)の書籍をもとに道徳科授業について考えていきます。

 「オープンダイアローグ」は1980年代に開発された精神疾患に対する治療方法です。その特徴は「対話」を中心としたミーティングを重ねることによって治癒をもたらすところにあります。

 さて、森川氏は著書の中で以下のように述べています。

(以下、抜粋)

『相談に来た人たちと上下関係が存在しがちな場では、専門職の言葉はどうしても重いものになってしまいます。実際の価値よりも重くなってしまえば、その言葉は助けになるどころか有害です。相手を理解しようと思って質問をしても、その質問自体が相手にとっては脅威になることがあります。そこで私は、質問をした意図も一緒に話すようにしています。

 たとえば「どうしてそう思ったのですか?」と聞くと詰問されているように感じるかもしれないので、「私はあなたの考えをもう少し理解しようと思っています。どうしてそのように思ったのかをお聞きしてもいいでしょうか」というように言葉を加えると、質問をした意図も一緒に伝えることができます。』

(以上)

 これを道徳科授業の一場面として考えてみます。近年「問い返し」や「補助発問」という手法が注目されています。その是非は今後述べるとしますが、子ども達にとって、「問い返される」ということがどれほど重いものとなっているか想像しないといけません。特に、日常的にあまり発言をしない児童にとって、教師による「問い返し」という行為が、その後の発言への恐怖を生み出すものになりかねません。

 「問い返す」という手法は大変有効であると認識しています。だからこそ、まずは子どもの発言を教師はきちんと受容すべきです。決して、「この意見が出たぞ!よし、問い返そう!」などと、授業展開のみを考えて問い返すものではないのです。

 さらに、なぜ問い返しをしているのか。その意図をきちんと伝える必要があります。「教師自身が対話の輪の中の一人である。対等な立場として、あなたの意見に興味がある。もっと教えてほしい。」その思いを届けるのです。

 そうすれば、子どもの心の中に「自分の意見が受け入れられた」という安心感が生まれます。受容されているという安心感があるからこそ、「問い返す」という手法が子ども達の学びを深める手立てになるのです。


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