2021/09/17

6年生「わたしのせいじゃない」(1)

6年生「わたしのせいじゃない」(1)日本文教出版


(1)絵本を見てみよう

 この教材はスウェーデンでシリーズ化されている絵本の翻訳本(発行所は岩崎書店)からの出典になります。その絵本の「訳者あとがき」に、以下のようなことが書かれています。

(以下、訳者あとがきを一部抜粋[1])

このシリーズの背景にはスウェーデンの学校で行われている「オリエンテーリング科」という教科があります。人間の生き方を模索しながら、同時に社会のさまざまな問題にも目を向け、友情、孤独、幸福といった人間関係の大切なテーマが扱われています。

(以上)

 このシリーズの他の題名は、「ともだち」「じぶん」「ひとりぼっち」「おんなのこだから」などがあります。これらの題名からも伝わってきますが、あとがきに書かれている「人間の生き方を模索しながら」という点が、まさに道徳科の目標と合致しているといえます。道徳科授業において、この絵本(教材)を通して「自己をみつめること」や「自分の生き方を考えること」が求められてるということです。


 上述のあとがきの続きを紹介します。

(以下、訳者あとがきを一部抜粋[2])

『わたしのせいじゃない』は、このシリーズのなかでもやや特異なシリアスな内容を備えています。いじめの状況と、その責任のなすりあいが描かれ、後半の写真は多くのことを語りかけてきます。』

(以上)

 教科書に掲載されているのは、いじめの場面のみとなっていますが、出典元の絵本では、その後に「原爆」や「飢餓」、「戦争」、「環境汚染」、「少年兵」などの写真が掲載されています。「いじめ」という身近であり残酷な事例を入り口にして、社会的な問題についても子ども達に深く考えてほしいという著者の願いが伝わってきます。

 教科書には前半の「いじめ」部分のみが掲載されています。しかし、道徳科の授業をする際、その「いじめ」の部分に焦点を当てるのか、そこを入り口にして広い意味での「公正、公平、社会正義」について考えさせるのか、授業者は一度考えてみる必要があるでしょう。

 なぜなら、学習指導要領解説(P53)にも、「社会的な差別や不公正さなどの問題はいまだに多く生起している状況があるため、これらについて考えを巡らせ(後略)」とあることから、この教材を入り口として広く人権課題について考えさせる授業を検討することも道徳科授業の目標に合ったものになるからです。

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