3年生「バスの中で」(1)(日本文教出版)
(1)学習指導要領を読んでみる
3年生「バスの中で」の教材研究です。この教材の内容項目はB「親切、思いやり」、中学年の指導の観点は「相手のことを思いやり、進んで親切にすること」となります。ここでの「相手のことを思いやる」とは、「相手の立場を考えたり相手の気持ちを想像したりすることを通して励ましや援助をすること」と記載されています。
また、中学年の指導の要点として、「相手の置かれている状況、困っていること、大変な思いをしていること、悲しい気持ちでいることを想像する」ことが大切だと書かれています。要するに、「自分だったらこうしてほしい」と思うことを相手にすることが思いやりだということに考え議論することを通して気づかせることが求められているのです。このことから、本教材の授業を考えていきたいと思います。
(2)当たり前を疑う
さて、この教材を読んだときに気をつけたいことがあります。それは、教師の「当たり前」と子ども達の「当たり前」にずれがあるのではないかということです。
例えば、「バスの中で高齢者に席をゆずることはいいことだ」という当たり前が大人にはあります(ゆずれるかどうかは別として)。ですから、この当たり前を土台として授業を考えようとしてしまいます。
しかし、この教材を子ども達はどう感じるでしょうか。まず、子ども達は日頃からバスや電車に乗っているのでしょうか。もしかしたら、バスに乗ったことのない子もいるかもしれません。一人でバスに乗るという設定を想像できない子もいることでしょう。「バスで席をゆずる」という場面に出会ったことのない子にとって、「お年寄りに席をゆずることはいいことだ」ということは当たり前の価値観ではないかもしれません。
もし、教師が「席をゆずるのは当たり前だね」という価値観で授業をすると、それは価値観の押しつけになってしまう恐れも生じます。そうであれば、「なぜ高齢者に席をゆずることはいいことなのか」という議論も必要といえるでしょう。価値のよさを自覚させるということです。
(3)一般化する
本教材は「バスで席をゆずる」という事例が扱われています。しかし、決してバスや電車でのマナーを扱うものではありません。道徳科の授業ですので、一つの事例をもとに一般化していくことが必要です。「高齢者に席をゆずる」を入り口として、「困っている人に親切にする」ということに広げていきたいところです。
その場合、困っている人は誰か、なぜ困っているのか、どうすればよいと思うか、他の場面も同様かなど、問題を発見し、問題の解決を考え、その考えを一般化させる。そのような展開も考えられるでしょう。
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