本日も、森川すいめい氏の『オープンダイアローグ 私たちはこうしている』(医学書院)という書籍をもとに道徳科授業及び道徳教育について考えていきます。
(オープンダイアローグとは1980年代にフィンランドで確立された精神医療の方法です。その特徴は『対話』を中心としたミーティングを重ねることで問題を解消することを目指すところにあります。)
(1)「アバウトネス」ではなく「ウィズネス」で
森川氏は、オープンダイアローグでの話し方について、「アバウトネス」と「ウィズネス」という2つの話し方をもとに説明しています。「アバウトネス(aboutness)」とは自分たちとは切り離されたこととして扱う話し方で、「ウィズネス(withness)」というのは、自分たちのこととして扱う話し方です。道徳科の授業においても、児童生徒の話し方がこの2つのどちらかになるかで、学びの質も大きく異なるでしょう。
【アバウトネスの会話の例】
Aさんはどうしていやがらせを止めないのでしょうか。Bさんはそれで困っている。近くにいるCさんがしっかりしなければならないと思います。
【ウィズネスの会話の例】
BさんとCさんの話を聞いて、私はとても心配になりました。CさんがどうしてAさんを止めることができないのか、何か事情があるのか、その理由を聞いてみたいです。
いかがでしょうか。どちらの発言も道徳的な問題に対して真剣に考えていると感じられます。しかし、アバウトネスの会話は他人事として発言しているように感じます。それに対して、ウィズネスの会話ではその人の悩みの本質に迫ろうとしています。
道徳科授業において、教材の中の問題を無責任に批判することは簡単です。しかし、安易に人物の言動を批判させることが果たして道徳性の成長につながるのでしょうか。道徳科の授業は、無責任な批判をさせることが目的ではありません。それではネット上での辛辣なコメントと同じものになってしまいます。だからこそ、オープンダイアローグと同様に、道徳科の授業でも「ウィズネス型」の対話を引き出す発問や展開が求められるのです。
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