2021/09/09

役割演技をやってみる(7)

役割演技をやってみる(7)

【役割演技(心理劇)の技法】

(1)ストレート・ロールプレイング

 最も基本的な役割演技の手法となります。児童生徒の視点(教材の世界の入り方)に合わせて演者を選定します。中心人物の視点で考えている児童生徒を中心人物役に、補助自我(対人物)の立場になって考えている児童生徒を補助自我役に選定します

 なお、治療を目的とする心理劇の場面でも、本人の役を本人自身が演じます。または、患者の役を患者本人が演じ、対立相手や補助自我の役を、その人以外の誰かが演じることになります(例えば、Aの役をA、Bの役をCが演じます)。


(2)役割交換

 ストレート・ロールプレイングとは逆の演者選定となります。中心人物の視点で考えている児童生徒を補助自我役に選定し、補助自我の視点で考えている児童生徒を中心人物の演者に選定します。例えば、トラブルを起こした少年に母親役を演じさせることで、母親の困り感を実感させるような演技になります。この場合、母親の心情を理解できるとともに、母親の視点から自分自身を観察できることになります。はじめに(1)のストレート・ロールプレイングをしたあと、役割を交換させる場合も多いです。


(3)二重自我法

 演者が演じきれていない部分を補助自我が補うことで、両者があたかも一体であるかのように演じる技法です。例えば、中心人物役の児童生徒の苦悩に対して、もう一人の演者が内省を促し気付きを生むように支持的(共感的)なフォローするように演じます。もう一人の演者は心の声のような演技になります。


(4)自我分割法

 心の中の葛藤を演じさせます。演者の中の相反する思いを表現させます。天使と悪魔を対話させるようなイメージでしょうか。


 以上、これらの技法は役割演技の基本的なものとなります。私自身は、(1)のストレート・ロールプレイングを「共感的役割演技」、(2)の役割交換を「治療的役割演技」と呼んでいます。教材のねらいや学級の実態を考慮して、最も効果的な演技技法を選択することも、監督役である授業者の大きな役割となるでしょう。


(参考図書)

R・J・コルシニ 2004 心理療法に生かす ロールプレイング・マニュアル 金子書房

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