3年生「バスの中で」(2)(日本文教出版)
(1)「動機」に注目する
『道徳科「深い学び」のための内容項目ハンドブック』によると、中学年内容項目「親切、思いやり」のポイントは「動機に注目する」ということになります。低学年は親切な行為の「結果」を意識させることがポイントになりますが、中学年では「相手の気持ちを考えたら、自分は〜」と、親切な意義や大切さを考えさせることが求められます。
本教材で説明すると、席をゆずってあげた後の喜びに焦点を当てるのが低学年の学習であり、席をゆずる理由を考えたり困難さに共感することを通して、それでも親切にできたわたしの心情について対話をするのが中学年の学習になります。
(2)「困っている人は、誰?」
範読後、「誰が出てきたかな?」という発問をよく見かけます。登場人物の確認をみんなでしているのですが、この発問を少し変えてみましょう。
例えば、「困っている人は誰?」という発問をしてみます。パッと思いつくのがおばあさんです。すぐに子ども達から出てきます。この発問をすることで、「おばあさん=困っている人」という布石をおいておくことができます。
さらに、「困っている人は何人いましたか?」という、「数を問う」という発問技法も考えられます。この発問により、「おばあさん以外にも困っている人はいるはずだ」という意識が子ども達の中に芽生え、必死に教材を読み出します。わたしの困り感に気づく子どももいるはずです。そこで、「イスに座っているのに、何に困っているの?」「わたしが一番困っていることは、何?」という問い返しから、わたしの揺れ動く心情に迫っていくことができます。
(3)「感情の大きさ」を問う
「席をゆずりたい」というわたしの思いは大変素敵で尊いものです。しかし、子ども達はそのよさを感じていないかもしれません。そこで、「席をゆずること」についての価値観を話し合わせいところです。ただし、「なぜ席をゆずるの?」と尋ねても、なかなか活発な対話は生まれないでしょう。
そこで、「席をゆずろうと思うことは、どれぐらいすごいこと?」と尋ねたうえで、大きさや動作で表現させてみてはどうでしょうか。大きな丸を描く子もいたら、小さな丸を描く子もいるでしょう。理由を聞くと、「自分にはできないと思うから」や、「当たり前だから」というものが出てきます。その発言について問い返すことで、価値理解のずれを認識させるとともに「親切な行為」のよさや難しさを確認していくのです。
〈参考図書〉
島恒生 2020『道徳科「深い学び」のための内容項目ハンドブック』日本文教出版
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