2022/10/13

道徳教育に対するイメージ


 河野哲也(2011)は、道徳教育に対するイメージについて、著書の中で以下のように述べています。

(以下、一部抜粋)

 従来の「道徳」教育に関するイメージとはどういうものであろうか。日本の道徳教育の伝統的なモデルは、心理学と結びついた徳育にあったといってよい。それは、社会で認められている一定の価値を受け入れ、社会規範やルールを遵守する個人を作り出す教育であった。(中略)さらに注意すべきは、個人が社会に貢献すべきこと、個人が社会に奉仕すべきことが、繰り返し何度も強調されていることである。だがその一方で、個人に対する社会の側からの貢献、すなわち、社会による個人の人権の擁護や自律性の尊重はアンバランスなまでに小さくなってしまっている。つまり、社会は個人よりも上位の価値をもつ存在者と見なされている。そこには、人間のエゴイズムに対する臆病なまでの恐怖心が表現されており、個人の尊厳という近代的な原理が軽視されているかのようだ。

(以上)

 社会と個人の関係について考えさせられる文章です。河野は、道徳教育が「社会規範やルールを遵守する個人を作り出す教育」になっていると訴えています。このことについて、私たちは道徳教育及び道徳科授業の本来の目的を見直す必要があるでしょう。


《参考引用文献》

河野哲也『道徳を問い直す リベラリズムと教育のゆくえ』(2011,ちくま書房)

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