2022/03/10

終末のやりとり



 『道徳教育の授業理論 十大主張とその展開』という書籍が明示図書から復刊されました。その書籍のなかで、井上治郎は、コールバーグの忠実な弟子とされているロナルド・ガルプレイスとトマス・ジョーンズが「コールバーグ理論を授業に生かすための教師用手引き書」として執筆した『道徳的理由づけ』(1976)をもとに、その主張を論じています。そのなかの「終末」についての記述を紹介します。

(以下、抜粋)

 指導過程の第四段階の終わり、すなわち終末段階においても、主人公のとるべき行為に関して、「意見の一致をえることや、一つの結論に到達すること」は、道徳の授業の趣旨ではない。子どもたちが、お互いの再度の「どうすべきか」と、それぞれの「理由づけ」を確認しあえば、あとは、いわば流れ解散である。そこで、教師が、なんらかの積極的な役割を果たすとすれば、たとえば、「うちへ帰って両親とも話してごらん」とか、「なぜ、きみの解決がいちばんよいんだろうね」とかともちかけて、教室内のやりとりが、教室外にも延長されるようにしむけることだけである。

(以上)

 道徳科授業の目的は対話そのものであると、これまでも説明してきました。この書籍は1981年発行ですので、すでに40年以上前から言われ続けていることだといえます。

 教師は「正解」を教えようとしてしまいがちですが、その「正解」は誰にとっても本当に「正解」なのか、まず教師が自身自身に問う必要があるでしょう。そのうえで、教師が「正解」だと判断したことについて、その是非を子供たちに協議させる。授業づくりでは、そのような意識が必要となるのです。


《引用参考文献》

現代道徳教育研究会編『道徳教育の授業理論 十大主張とその展開』(1981,明示図書)

0 件のコメント: