社会学から生まれた「社会構成主義」という考え方が、道徳科授業の方向性に大きな影響を与えていると私は感じています。
社会構成主義では、「現実」はそれとして存在するのではなく、人々の頭の中で作り上げられるという考え方になります。
さて、心理学者であるケネス・ガーゲンは、人は対話(ダイアローグ)を通して意味をつくっていくのであり、「言葉が世界を創造する」と述べて社会構成主義に新しい価値を与えています。また、「治療者」と「患者」という固定した役割のもとにセラピーが行われ、治療者の頭の中にある「正常な」状態へ患者を導くのではなく、対話を通して二人の間に新たな現実を創り出すことも提唱しています。
このことは、道徳科授業でも同様のことが言えるのではないでしょうか。教師が正解を持っていて、子供たちを導く道徳科授業。従来はそのような構図で授業が行われていました。しかし、現在は決して大人が正解を持っている社会ではありません。だからこそ、教師と子供、または子供同士が対話をすることで、自分たちの「新たな現実(意味)をつくる」ことが求められているのです。
もう少し具体的に述べると、学習指導要領や内容項目を教えることがゴールではなく、それをもとに自分たちの生き方を考えさせ、未来の自分(社会)を思い描く。そのような道徳科授業が求められているということです。
《引用参考文献》
ケネス・J・ガーゲン、メアリー・ガーゲン著『現実はいつも対話から生まれる 社会構成主義入門』(2018,ディスカバリー・トゥエンティワン)
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