参考文献の中で、「対立への対処」のための有望な実践の一つとして、「パブリック・カンバセーション」というプロジェクトが紹介されています。以下、そのプロジェクトを参考文献をもとに簡単に紹介します。
この会話の効果の一つは、対立が段階的に縮小することだとガーゲンは述べています。参加者は立場を変えるよう求められてはいません(立場を変えたりもしません)が、反対側の立場をとる人をより共感を持って理解することができるようになるということです。
さて、上記のプロジェクトを道徳科授業と置き換えて考えてみます。まず大事になるのは、「同じような人間性を持ち合わせているという感覚」です。これは、日々の生活の中で育むものであり、そして、導入の発問で感じさせられるものではないでしょうか。そうであれば、導入の役割の一つとして、「同じような人間性を感じさせる」という目的も考えられます。
次に、「経験に基づいた話をする」ということです。主義主張を議論するのではなく、自分が経験した苦痛について語らせるということでした。道徳科授業では教材を使い、登場人物になって様々な問題の世界に入ります。登場人物の感じる苦痛や葛藤を語らせることが、このことに該当すると考えられます。
そして、自分の立場に対して感じる疑念についても話すということについては、子供たちはそのような疑念に気づきにくいかもしれないので、補助発問や問い返しを通して自分の考え方を見つめさせます。
このように、道徳科授業の基本的な展開は社会構成主義の考え方と非常に親和性が高いと言えるのではないでしょうか。
《引用参考文献》
ケネス・J・ガーゲン、メアリー・ガーゲン著『現実はいつも対話から生まれる 社会構成主義入門』(2018,ディスカバリー・トゥエンティワン)
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