2022/09/02

「告白もの教材」の扱い方について〜卒業文集最後の二行〜(3)

 『卒業文集最後の二行』の内容項目は、「公正、公平、社会正義」です。

 中学校学習指導要領解説の記述を見ると、以下のような内容が目に入ってきます。

(以下、学習指導要領解説より抜粋)

・公平に接するためには、偏ったものの見方や考え方を避けるよう務めることが大切である。好き嫌いは感情であるため、全くなくすことはできないが、とらわれないようにすることはできる。好き嫌いから他者に対して偏見をもたないように努めることはできるのである。

・よりよい社会を実現するためには正義と公正さを重んじる精神が不可欠であり、物事の是非を見極めて、誰に対しても公平に接し続けようとすることが必要となる。また、法やきまりに反する行為と同様に、自他の不公正に気づき、それを許さないという断固とした姿勢と力を合わせて積極的に差別や偏見をなくす努力が必要である。

(以上)

 本教材のわたし(一戸氏)は、好き嫌いからT子に対して偏見をもち、公平に接することができませんでした。当時のわたしは、自らの弱さを自覚しつつも、不公正な行為を止めることはできず、T子をいじめ続けた。これは、覆すことも許されることもできない事実です。

 このことにつなげて、本教材を読んで疑問が一つ浮かんできます。一戸氏は、この事実を手記として世に出しました。教材には書かれていませんが、大学の講義でも毎年学生に話し続けたようです。

 過去のことなので、一戸氏は黙って生きていくこともできます。それなのに、なぜ、許してもらえないと知りながら、自らの行為を手記として書き表しているのでしょうか。この疑問を中心発問に据えることで、「告白もの教材」の特色を生かした授業が作れるのではないかと考えます。


《引用参考文献》

日本道徳教育学会第99回大会(令和4年度春季大会)プログラム・発表要旨集


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