「教室マルトリートメント」の見つめ直しを提唱している川上(2022)は、ペアトークについて以下のように述べています。なお、「マルトリートメント」とは、mal(悪い)+treatment(扱い)で、「不適切な養育」「避けたい関わり方」などの意味で使われます。教室の中で考えると、違法行為の一歩手前のレベルの「行き過ぎた指導」や、これまでは当たり前に行われていた指導だけれども、あらためて考えると子どもの心を傷つける要素のもつ不適切な指導のことをいいます。
(以下、抜粋)
今の子どもたちが求めている授業をキーワード化すれば、「参加感」と「達成感」に集約されるのではないでしょうか。参加感が薄くなったり、達成感がないと感じ始めたりすると、あっという間に、子どもたちの気持ちが授業から離れていく姿を見せるからです。そのためには、小刻みに考えたり、お互いの意見をアウトプットしたりする時間を確保する必要があります。その具体的な方法の一つが、ペアトークやペア活動です。
(以上)
このように、ペアトークは、子供たちの主体的な学びを保証するために大変有効だと言えます。そのうえで、川上はペアトークの意義を5つ述べています。
(1)アウトプットすることで記憶を定着させる。
→頭で分かったつもりのことを、自分の言葉で整理し直すことができる。
(2)理解レベルや活動の進捗状況をそろえることができる。
→「ここまでで大切だと思ったことを伝え合おう」などの時間を設けることで、理解度や進み方をそろえることができる。
(3)他の人のフィルターを通して学べる。
→同じ話を聞いても人によって感じ方は異なるので、それを伝え合うことで新たな視点を獲得することができる。
(4)集中を続けるために、いったん解放(ガス抜き)する効果がある。
→話を一方的に聞き続けることが難しい子が、気持ちを切り替えることができる。
(5)考えを整理させたり、自信をもたせたりする。
→全体発表の前にペアで話しておくことで、考えを整理させることができる。事前の発表練習もできるので、自信をもたせることもできる。
これらのことから、他教科はもちろん、道徳科授業においてもペアトークを取り入れることは大変有効であるといえるでしょう。
《引用参考文献》
川上康則『教室マルトリートメント』(2022,東洋館出版社)
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