2022/07/29

道徳科教材でおこなう人権教育

 4年生教材「ヒキガエルとロバ」の授業を考えます。多くの場合、ロバの行動によって変容する中心人物(アドルフ)の心情を理解することに重きを置いています。このことに関して、園田(2021)は、ヒキガエルの気持ちを想像させることの重要性を述べています。

(以下、著書より抜粋) 

 多面的・多角的な思考を重視するなら、ヒキガエルの視点から、この読み物をどう捉えるかということを忘れるわけにはいかない。「自分がヒキガエルの立場だったら、どのような気持ちになるか」子ども達に想像してもらい、ヒキガエルの思いをすべて書き出してみてはどうだろう。どうして自分は石を投げつけられないといけないのですか。雨上がりの道ばたで、私はふつうにひと跳ねしただけです。いつも通りに自然な動きをしたに過ぎません。自分がふだん暮らしているところで、ふだん通りにピョンとひと跳ねしただけのことです。そこをたまたま通りかかったアドルフたちに、私は何か悪いことでもしたのでしょうか。

 ヒキガエルはたちまち生命の危機にさらされる。存在そのものを頭から否定されたも同然のこと。これほど理不尽なことはない。納得できることなど一点もない。「生命の尊さ」の全否定。このようなことは絶対に許されるものではない。許してはならない

(以上)

 ヒキガエルは、少年たちによる偏見によって生命の危機にさらされました。その人らしく生きることを否定されました。このように、「ヒキガエルとロバ」は、「差別」を扱った教材であると言えます。もし自分が、教室の中でそのように扱われたら・・・。考えただけで恐ろしくなります。なぜ、少年たちはヒキガエルに石を投げつけたのか。その理不尽さを考えることは、いじめ問題を考えることにもつながります。世の中に同じように理不尽な出来事はないか。それを探すことで様々な人権課題を考えるきっかけになります。

 このように、道徳科教材を使って人権教育を推進することはとても大事なことです。


《引用参考文献》

園田雅治『「つながり」を育み授業を愉しむ』(2021,解放者出版)

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