法務省が提唱している「社会全体で解決すべき主な人権課題」の中の一つに「子どもの人権」があります。「虐待」や「いじめ問題」、「ヤングケアラー」などが思い浮かびます。ここでは道徳科授業と人権教育の関連を「いじめ問題」を通して考えます。 道徳科授業の内容項目「C公正、公平、社会正義」の高学年では、「傍観者」と「躊躇なくSOSを出すこと」について考えさせることを意識して授業をつくる必要があります。学習指導要領解説に以下のような記載(小学校解53頁から抜粋)があるからです。
(1)いじめなどの場面に出会ったときにともすると傍観的な立場に立ち、問題から目を背ける人も少なくない。
(2)同調圧力に流されないで必要に応じ自分の意思を強くもったり、学校や関係機関に助けを求めたりすることに躊躇しないなど(後略)
このように、道徳科授業の中で、いじめの傍観者になってしまう人間の弱さや後ろめたさについて考えさせたり、いじめの解決方法の一つとして学級の誰かがSOSを出すことが大切であると理解させることが重要になるのです。
しかし、「考えさせる(イメージさせる)」だけでは実践行動にはつながりません。だからこそ、道徳科授業と人権教育を関連させて授業をデザインする必要があるのです。
さて、人権教育には3つの側面があります。
(1)態度的側面・・・差別や偏見を許さず、様々な人権課題を解消したいと願う心を育てる。
(2)知識的側面・・・差別の現実や歴史についての正しい知識を学ぶ。
(3)技能的側面・・・差別・偏見の解消に向けて行動するための実践行動力を育てる。
道徳科授業で「善を尊び悪を許さない心」を育てることは人権教育の一側面(態度的側面)になります。しかし、その一面だけでは現実的にいじめの解消は難しいでしょう。授業の中や事後指導で、いじめの4層構造や法律など(道徳科教科書にも記載)の正しい知識について学ぶことで、知識的側面を養うことも大切になります。
そのうえで、例えば授業後に「いじめアンケート」を実施することにします。そのアンケートを「SOSの出し方を学ぶ」という経験に位置付けることで、技能的側面を養うことができます。
このように、一つ一つの教育活動を「人権課題の解消のための資質・能力の向上」につなげることが、人権教育の在り方なのです。
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