2022/07/24

役割演技を分析する(2)〜6年生教材「ヘレンと共に ーアニー・サリバンー」〜


前記事の授業記録の続き

『では、〇〇さん。先ほど生きる感情を持っていると言ってくれました。ヘレン・ケラー役をやってくれますか』

(ヘレン役の演者前へ)

『ヘレン・ケラーです。今から、目を開けてはいけません。話をしてもいけません。この時のヘレンになってください。まだ、手づかみでご飯を食べている。アニーの熱意ややさしさに気づいていない。厳しくされている。この後、ウォーターと気づく場面がありますが、その前のヘレンになってください』


『●●さん。アニー・サリバン役をお願いしてもいいですか。喜びや希望をヘレンに伝えたいというアニーです』

(アニー役の演者前へ)

『今から、普段の文字を教える時間です。ヘレンはまだ文字を知らないので、何をしているのかわからない状態です。あなた(ヘレン役)はそれを想像してください。それに対してアニー役のあなたは喜びや希望を伝えたい。やさしくて厳しいアニー・サリバンです』


『では、今から演じてもらいます。皆さんには、二人の様子とか、アニー・サリバンの反応や、どのように声をかけているかを見てもらいます。ヘレンは、今から喋らないでください。不安でなければ、目を閉じておいてください。何を感じるのでしょう」

演者を選定する際は、それまでの発言や児童の視点をもとに授業者が決めます。演技までの発問や対話が選定の布石になります。本授業では、「ヘレンにも生きる感情がある」と発言した児童をヘレン役、「ヘレンにも喜びと感謝を味わわせたい」と発言した児童をアニー役に決めています。

そして、演技前に「あなたはヘレンです」のように、児童の視点を定めてあげることや、場の設定を全体で共有させることも、監督役である授業者の役目になります。ここでは、「厳しさの上の優しさ」という板書(児童の発言)も使って人物の設定をしています。


【演技、開始】

アニー「じゃあ、これを見てください。」

(ヘレンの手の平に文字を書いているが、ヘレンは反応せず。)

(ヘレンの片手を持ち、指で手の平に書いてあげる)

アニー「次はこれ(チョーク)を手に持ってください」

(手の平にチョークと書いている)

アニー「では、これを書いてみましょう」

(ヘレンの片手を持ち、手の平にチョークと書かせる)。

アニー「これは定規と言います」

(同じように繰り返していく)


『ここまでにします。まず見ていた人に聞きます。ヘレン・ケラーを見ていてどう思いましたか』

「ヘレンは、ただ寝ているだけのようで、勉強しているようには見えませんでした」

「字というものを知らないので、勉強というより、ただ手を動かす運動に見えました」

「文字を教えても、文字とはわからず、ただ真似をしているだけかと思いました」


『ありがとう。◯◯さん、どのような感じでした?』

「ヘレン・ケラーは目も耳も口も不自由で何もすることができなくて、そのように考えてみたら、●●さんがしゃべっている言葉は、普通には聞こえなくて、ただものを持って手を動かされるだけのように感じました」


『アニー・サリバン(●●さん)を見ていて、どうでしたか?』

「がんばって教えようとしていました。」

「がんばって教えようという気持ちは伝わってきたけど、それが届かなくて、悲し・・・くはないけど、伝わらないと分かっていても何回も教えていて、いいなぁと思いました」

「すぐに伝わることではないけれど、それでも何回もやって、字をヘレン・ケラーに教えたいということが伝わりました」


『●●さん、実際にやってみてどうでした?』

●●「話しかけても聞こえてないし、私がヘレンに「これが〜だよ」と教えていても、ヘレンには聞こえていないので、本当に分かってくれているかが分からず、ちょっと不安もありました。」

本授業では、範読に沿って2回の役割演技を行っています。1回目が、アニーがヘレンに辛抱強く文字を教えようとしている場面です。さて、役割演技で大事にしたいことは上手に演じさせることではなく、演技を見ている観客役の児童がどのような感想を抱いたかを共有することです。また、その感想を聞いた監督(授業者)と演者の対話を観察させることで、自らが抱いた感想を再度ふり返させることも大切になります。演技後の「リフレクティング」がとても重要だということです。この場面でも、演技後はまず観客役の児童の感想を聞いています。

0 件のコメント: