ハーレーン・アンダーソンは、セラピーにおける「変化」について以下のように述べています。
(以下、引用参考文献から一部抜粋)
セラピーにおける変化とは、新しい物語を対話によって創造することであり、それゆえ、新たな主体となる機会を拡げることである。物語が変化をもたらす力をもつのは、人生の出来事を今までとは異なる新しい意味の文脈へと関係づけるからである。人は、他者との会話によって育まれる物語的アイデンティティのなかで、そして、それを通して生きる。「自己」は常に変化し続けており、それゆえ、治療者の技能とは、このプロセスに参加する能力を意味する。
(以上)
上記の「セラピーにおける変化」を、「道徳科授業における児童生徒の変容」と置き換えてみます。人は「語る」ことによって、過去の出来事に新たな意味をもたせることができます。この場合の「語る」は、決して言葉として発することだけではなく、自己の心の中での対話を通して自分の考え方や過去の経験を見つめることも含まれると考えます。
それゆえ、道徳科授業では「自己を語る」という時間がとても重要になります。ただし、自分の生活経験や家族のことをそのまま語ることには抵抗があります。そこで、教材の人物になって「きっと◯◯は〜と思っている」と発言をしたり、「〜はできないよね。でも・・・。」と人間(自分)の弱さに気づかせたりする必要があるのです。そうすることで、自らを見つめさせ、過去の経験に新たな意味をもたせるとともに、今後の生き方を考えさせることにつなげるのです。
《引用参考文献》
シーラ・マクナミー、ケネス・J・ガーゲン編 野口裕二・野村直樹訳『ナラティブ・セラピー 社会構成主義の実践』(1997,金剛出版)
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