学習内容を明確にする(3)
学習内容の明確化について述べてきました。少し実例を交えて具体的な話に入りたいと思います。例えば、内容項目B「親切、思いやり」について、学習指導要領解説の内容をもとに考えてみます。
低学年:身近にいる人に温かい心で接し、親切にすること。
中学年:相手のことを思いやり、進んで親切にすること。
高学年:誰に対しても思いやりの心をもち、相手の立場に立って親切にすること。
(中学校は「思いやり、感謝」となるので、ここでは省略します)
上記の学習指導要領解説の内容を、どのように感じるでしょうか。なんだか、同じような文言で書かれているなぁと思われた方もいるかもしれません。「親切にすること」という文末がどの学年も共通しているからです。
しかし、学年ごとの内容を比べてみると、明らかな異なりが見えてきます(「比べる」という視点は授業展開や発問にも使える手法です)。以下の2点です。
(1)思いやる対象・・・「身近にいる人」→「相手のことを」→「誰に対しても」
(2)親切の仕方・・・「親切にする」→「進んで親切にする」→「相手の立場に立って親切にする」
「思いやる対象」や「親切の仕方」が、発達段階で異なることに気づきます。例えば、低学年の対象は「身近な人」です。身近にいる人の喜ぶ顔を見ることで自分も嬉しくなるということに気づかせます。要するに、思いやりの気持ちを大切にしたり親切な行動をしたりした結果を、しっかりと考えさせるのです。
対して、中学年では相手の気持ちを考える、いわゆる「自分だったらこうしてほしい」という思考を求めます。低学年が結果なのに対して、中学年では「動機」を大切にすることになります。
高学年では「誰に対しても」となります。では、「誰」を想定したらいいか。知らない人ですか。自分に嫌なことをした人ですか。これらを考えていくと、自然と補助発問も生まれるのではないでしょうか。また、「相手の立場に立って」ともありますので、「どうすることが本当に相手のためになるのか」を思考させることも大切になるでしょう。
このように、指導要領解説の内容を比べることで、考え議論させる内容が明確になります。これをもとに授業をつくっていくことで、道徳授業での「学び」(児童生徒が身につける見方・考え方)も明確になり、子どもたちが主体的に取り組める授業づくりにつながります。
なお、これらのことは、日本文教出版の下記資料をもとに述べています。この冊子は大変わかりやすく書かれていますので、おすすめです。
(参考)道徳科「深い学び」のための内容項目ハンドブック 2020 島恒生 日本文教出版
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