2023/12/08

道徳科授業の発問研究(10)〜6年生「ロレンゾの友達」〜


 道徳科の教材文を読んでみると、小さな違和感や疑問を感じることがある。その違和感や疑問こそ、「発問」のヒントになるものである。このことは、「この教材は、この授業の仕方が当たり前」と思って読んでいると見つけられないものかもしれない。いつでも初めてその教材を扱うつもりで、そして、何度も繰り返し読み込むことで見つけられるものであり、ここから「発問」を考えることができるのである。

 ここで、内容項目B「友情、信頼」の第6学年教材、「ロレンゾの友達」(出典:6年生「生きる力」日本文教出版)の発問を考えてみる。本教材で気になる一文は、町の警察署で、ロレンゾと、アンドレ、サバイユ、ニコライの3人が再会する場面の、「四人は大笑いをしながら、あらん限りの力でだきしめ合った。」という一文である。それまでにロレンゾのことを疑っていた3人は、なぜあらん限りの力で抱きしめ合うことができたのか。もし、疑っていたことを申し訳なく思っているのなら、果たして力の限り抱きしめ合うことはできるものだろうか。本教材では、最後の場面で3人が本当のことを打ち明けずに悩みながら帰路に就く様子が描かれているが、悩んでいる3人が再会時に力の限り抱きしめ合えていることに、矛盾が生じているのではないかと考える。

 子供たちに、「3人は、なぜ正直に言えなかったのか」と問うと、「申し訳なくて言えない」「信頼を失いたくない」などの意見が出てくる。ここでこそ、子供たちの思考をゆさぶる発問として、「なぜ、力の限り抱きしめ合うことができたのか」と発問したい。「力の限り抱きしめ合う」とは、相手を信頼し合うからこそできる行為である。そうであれば、子供たちもその矛盾に気づき、考えざるを得ない状況になるのではないだろうか。

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