2024/02/10

本がかりさん がんばっているね(4)〜自尊感情〜


 2年生の教材「本がかりさん がんばっているね」の授業づくりについて、今回は「自尊感情」と絡めて考えます。

 教材の終わりの場面では、学級のみんなから賞賛や感謝を受ける本係の二人が描かれています。おそらく、二人はとても嬉しく感じたことでしょう。

 その後、二人は顔を見合わせて、にっこりと微笑みました。ここで一つ考えてみます。みんなから賞賛や感謝を受けた時と、二人で顔を見合わせた時と、どちらの方の喜びが大きかったのでしょうか。子供たちに問うと、どのように答えるでしょうか。

 みんなから褒められることも、もちろんとても嬉しいことです。「結果に着目する」ことが低学年の授業のポイントの一つであるので、賞賛や感謝を強調することも大切です。しかし、授業前半の二人の意欲や、中盤の葛藤場面での努力に強く共感している児童なら、後者の「顔を見合わせ、にっこりとほほえみました」の方の喜びが大きいと答えるかもしれません。また、日頃から係活動に熱中している子も、後者を選ぶ傾向があるのではないかと考えます。

 ここで、「基本的自尊感情を高める」という視点から、本教材を分析します。心理学者の近藤卓は、あるがままの自分自身を受け入れ、自分自身をかけがえのない存在としてそのままに認める感情を「基本的自尊感情」と定義し、その「基本的自尊感情」を高めるには、「共有体験」の積み重ねが重要だと論じています。

 本教材の中で、本係の二人の努力が葛藤しながらも仕事に取り組む様子や、みんなに賞賛されてにっこりと微笑み合っている姿が、まさに「共有体験」と言えるでしょう。その場面を授業者が意識的に取り上げ、その喜びや充実感を想像させることが、目の前の子供たちの自尊感情を高める一助になるのではないかと考えます。


【参考文献】近藤卓『基本的自尊感情を育てるいのちの教育』(2014,金子書房)

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