2024/01/22

道徳教育の歴史(2)〜社会科と徳育〜


 修身科を核とした戦前の道徳教育体制は撤廃されましたが、問題はそれに代わるべき徳育をどのように構想するかということにありました。当面はまず、次の2点の方法を採用することになりました。

(1)民主主義的な社会原理を、新たな徳育の原理に据える。

(2)我が国の伝統とでも言うべき「道徳的態度形成中心」の視点から脱却し、「道徳的価値認識形成中心」の徳育のあり方を採る。

 この方針を受けて、新教育体制の「学習指導要領一般編」では、教育課程の中に社会科がおかれます。新たに採用された「社会科」は、「社会生活についての良識と性格を養うために、戦前の修身・公民・地理・歴史などの教科の内容を融合し、一体化させたもの」とされました。この背景には、教育使節団報告書にある公民教育授業の実施案の一例として、ソーシャル・スタディズが参考にされたことが考えられます。

 このとき、「社会科は従来の修身・公民・地理・歴史を一括総称したものではない」とされましたが、その目標の中に、

生徒が人間としての自覚を深めて人格を発展させるように導き、社会連帯性の意識を強めて、共同生活の進歩に貢献すると共に、礼儀正しい社会人として行動するように導くこと。


社会生活において事業を合理的に判断するとともに、社会の秩序や法を尊重して行動する態度を養い、更に政治的な諸問題に対して宣伝の意味を理解し、自分で種々の情報を集めて、科学的総合的な自分の考え方を立て、正義・公正・友愛の精神をもって、共同の福祉を増進する関心と能力とを発展させること。

とあるように、社会科が、新教育の道徳教育において中心的役割を期待されていたことが見て取れます。いわば、社会科学的認識形成と組み合わされて道徳的実践にかかわる態度形成が見込まれていたということです。


《参考引用文献》

上田薫・平野智美『教育学講座16 新しい道徳教育の探求』(1979,学習研究社)

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