中学校1年生教材「裏庭でのできごと」について考えていきます。
例えば、「なぜ健二は職員室に向かおうと思ったのか」という発問をすると、「ばれて怒られるのが嫌だから」「モヤモヤする気持ちが消えないから」などの意見が子供たちから出てきます。確かにその通りな発言かもしれませんが、これらの考え方からは、健二の行為に対しての尊敬の念が感じられません。どうしても、健二の自己保身のための行動に感じてしまいます。
もし、ここまでに「誠実な生き方」という主題を提示していたり、導入で「誠実な生き方とは?」と尋ねたりしているのであれば、ここで「誠実な生き方とは、自己保身のためのもの(自分を守るためのもの)?」と尋ねていることもおもしろそうです。
また、宮地忠雄は、道徳の時間(当時)で大事なことは『道徳的な価値についての認識を深めさせ、その実現について尊敬の念を抱かせること』と述べています。そうであれば、子供たちのどのような発言に焦点を当てると「尊敬の念」を抱かせることができるのでしょうか。
実際の授業では、子供たちは以下のような発言もしていました。
「正直に言った方が、人として成長できる」
「このままだと、自分に嘘をつくことになる。」
「嘘をつくということに慣れてしまいたくない」
上記のような発言に対して、「どういうこと?もっと具体的に教えてほしいな」と問い返すことで、健二の言動への尊敬の念を抱かせることができるのではないかと考えます。
《参考引用文献》
宮地忠雄『道徳指導シリーズ8 道徳授業と発問』(1973,明治図書出版)
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